清水晃治
働き方改革について。
昨今、いろいろな場面で耳にする働き方改革については、令和4年第4回定例会でも井上議員や熊澤議員からも一般質問が出されたばかりですが、私自身も北名古屋市の職員さんたちが働く環境については以前より注目をし独自で分析をしておりました。
まずは世間一般として、2019年4月より労働基準法や労働時間等設定改善法などいわゆる働き方改革関連法が順次施行されて、これまでの働き方とは個人の意識も含めて大きくさま変わりしてきたように思われます。
私が以前勤めていた企業では、働き方改革の波はもう少し早くから訪れており、私がまだ勤めておりました10年以上前からノー残業デーを設定し、半ば強制的に帰宅するように促すなどして長時間労働の削減を試みるなど様々な施策が試行錯誤されておりましたが、最初に確認しておかなければならないことは、そもそも働き方改革の目的は何かということです。
とかく長時間労働をなくすことばかりがクローズアップされて、残業を減らすことが目的化しているように私は感じております。
厚生労働省は、2019年に公表した「働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて~」の中で、働き方改革は働く方々が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で選択できるようにするための改革と述べられております。
このように、目的は多様な働き方を就業者自らが選択できるような環境にすることであり、その多様な働き方を実現するために、長時間労働を強制するような職場ではいけないので時間外労働の上限を設けたり、業務が個人に依存することなく組織全体でサポートできる職場環境が構築されるように促すため、年5日の年次有給休暇の取得が義務化されたわけですが、公務員は民間企業と違って労働基準法の適用はされないものの、これらはあくまでも目的を実現するための手段であることを私たちは忘れてはいけないと思います。
また「働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて~」では、現在日本が直面している少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少や、働く方々のニーズの多様化などの課題に対応するためには、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲、能力を存分に発揮できる環境をつくることが必要であるとも述べられております。
ここでいう投資やイノベーションによる生産性向上の一つの手段として、現在、世間で声高に叫ばれているデジタルトランスフォーメーションがあったり、さらにここでいう環境は社会や仕組みなど広い意味も含んでおりますが、何よりも働く方々にとって身近な働く職場となるわけです。
私は常々、市民サービスの向上のためには、直接市民の方々と向き合って働いている職員さんたちにとって働きやすい職場環境をつくることが何より大切だと考えておりますので、私は議員になった5年前から機会を見ては職員さんたちとお話しする際に、今の職場は働きやすい環境ですか、より働きやすい環境にするには何が必要でしょうかといった問いかけをさせていただいておりました。
そこで今回は、職員さんたちにヒアリングさせていただいたご意見や、私が企業の職場で試行錯誤してきた働き方改革の失敗及び成功の経験を踏まえ、僭越ながら現在の北名古屋市職員さんたちの職場環境について分析した結果を基に一般質問させていただきたいと思います。
まず初めに、長時間労働を是正し、計画的に年次有給休暇を取得しやすい職場環境にするために必要なことは、業務が個人に依存せず職場内でいつでも代行できるサポート体制をつくることが必要となります。
業務の専門性と職務の範囲から、自分がいないと仕事が回らないというように業務が個人に依存してしまうと、繁忙時においては業務負荷を分散させたくても分散できる人がおらず、結果的に個人に長時間労働を強いることになってしまいます。
また、平常時においても、毎日行う業務であれば業務を停滞させることができないという理由で年次有給休暇の取得をちゅうちょする方も出てくるのではないでしょうか。
この課題を解決するためには、自分がいなくても最低限業務が停滞しない程度に業務を代行できるサポート体制が必要であり、1つの業務を一個人だけが担当するのではなく、1つの業務を複数人が担当できる体制が必要となります。
ただ、職員さんの数にも限りがありますので、複数の業務を複数人で担当するチーム制のような組織が好ましいと私は考えております。
次に、業務負荷の見える化と職場内での共有が必要となります。私が民間企業で経験した際には、働き方改革の実現のために最も重要と感じたのは、この見える化と職場内での共有でありました。
働き方改革関連法における変更点に労働時間の客観的な把握があるように、これはとても重要なことです。
私自身もそうであったように、日本人の中には長い歴史の中から培われてきたでっち奉公の文化や意識があるのか、業務に時間がかかってしまうのは知識や経験が足りていない自分のせいなので、就業時間以外のところで努力しなければならないといった意識が働くことがあります。
そのため、ノー残業や長時間労働を悪とする言葉ばかりが先行した職場になってしまうと、特に責任感の強い方は残業時間を正確に申請せず実際より少ない時間を申請してしまうおそれがありますので、組織としてはしっかりと注意しなければなりません。
多少はよかれと思って許してしまいますと、実際に要した就業時間より少ない時間で申請された場合には、これだけ少ない時間で業務がこなせるのであれば、もっと業務を依頼することができるとその上司は考えてしまいますので、もっともっとと業務量が雪だるま式に膨れ上がってしまい、最後には処理することができないくらいの業務量となり、事が発覚したときには対応が困難な事態になっていることがありますので、客観的に、そして正確に就業時間を把握することは本当に重要となるわけです。
また、その客観的な把握を担当者と上司だけが行うのではなく、職場全体で共有し職場全体で負荷の分散に協力するという雰囲気づくりもまた大変重要となるのですが、実際には職場内の同僚たちも直接その業務に携わっていなければ漠然と忙しそうだということは理解できるものの、具体的に日々どの程度の負荷がどのぐらい期間かかっているのかはなかなか理解できないものです。
職場内での共有方法として、私が勤めていた企業の例を1つご紹介させていただきますと、毎日終業の時間になりますと職場単位で集まり終礼を行っておりました。
この終礼では、当日残業を行う予定の者が挙手をし、その残業内容と残業予定時間を口頭で申請し、上司はその報告を受けて当日残業を行わなければならないほど緊急性があるのか、職場内で業務を分担し個々の残業時間を減らすことはできないかなど判断して指示を出すようにしておりました。
この終礼の狙いは、まず初めに、残業を申請する担当者においては具体的な作業内容と残業予定時間を申請するためには個々が抱えている業務量を客観的に見積もり把握することです。
これを日々繰り返していくうちに、締切りから逆算して日々どの程度業務を進捗させる必要があるのかという計画を立てられるようになります。
また、個々の業務で計画が立てられるようになると、複数の業務を並行して進めた際にどの時期にどのぐらいの負荷がかかるかを事前に予測を立てることができるようになり、もし処理し切れないほどの業務量が発生することが事前に予測されれば、上司と相談して対応策を講じることもできるようになりますので、突発的なリスクを回避することができ、職場全体として長時間労働の抑制につながるようコントロールできるようになるというわけです。
次に、職場内においては、各個人が有している業務内容とその負荷を周りの同僚に共有することができます。
これを日々繰り返していくうちに、個人にかかっている負荷が一過性のものなのか慢性的なものなのかを職場全員で共有できるようになります。
そして最後に、上司においては職場内全員の日々の業務負荷を把握することができるとともに、業務負荷を平準化させるための対策と指示をその場で出すことができますので、業務を効率的に行うことができます。
終礼での残業予定時間の報告と共有は様々な効果を生むわけですが、その中で私が最も効果があったと感じたことは意識の改革でした。毎日残業申請をしている者は、どうしたら残業時間を減らせられるだろうかと意識するようになり、毎日残業申請をする者を見ていた同僚たちは、何か手伝えることはないかと自発的に協力し合える職場の雰囲気が生まれ始めたのでした。
さらには、もっと協力し合える職場環境をつくるためには何が障壁になっているのかと、真の課題を自ら探求し改善提案をするボトムアップの風土が、私が以前勤めていた企業では生まれ始めて大きな効果へとつながっていったのです。
さて、太田市長は選挙公約で働き方改革を掲げてきましたので、いよいよ北名古屋市の職員さんたちにとってもその働き方改革の波はやってくることになると思いますが、北名古屋市の職員さんたちがより働きやすい職場環境になることを強く望む者として、3点質問をさせていただきたいと思います。
質問1.労働時間の客観的な把握が義務づけられておりますが、さきに述べたように過少の申請とならないように正確に把握することが重要なわけですが、申請と実態に差異が発生しないようにするための歯止めとして、どのような対策を講じておりますか。
質問2.職場内で各個人の業務負荷が偏った場合には、どのような対応をしておりますか。
質問3.さきに述べましたように、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を選択したり、計画的に年次有給休暇を取得するためには、業務の遂行が個人に依存せず、担当者が休んだ場合でも代行者が業務をサポートできるチーム制のような組織が好ましいと私は考えております。
これは毎年4月に人事異動で職場を変わった場合でも、その異動があった業務を担当する者に過度に負荷がかかることを回避し、市民へのサービス低下を防ぐことにもつながると思うのですが、このような柔軟な働き方を選択できる職場づくりとして当局はどのような体制を目指しているのかお教えください。
以上、当局の見解をよろしくお願いいたします。
総務部次長兼人事秘書課長(大野茂)
働き方改革について、お答えいたします。
最初に、残業時間の申請と実態に差異が発生しないための対策については、本市における時間外勤務は、所属長に事前申請を行い、時間外勤務の命を受けて勤務し、その後に勤務時間の実績を入力することで決裁処理を行っております。
所属長は労働時間管理を適正に把握する義務があることから、必要に応じて実態調査を実施し適正な管理を行う旨定めておりますので、引き続き周知を図り労働時間の適正管理に努めてまいります。
次に、各個人の業務負荷が偏った場合の対応についてですが、本市が運用している人事評価制度により人事評価に係る面談が年3回設定されており、その際に業務の進捗や業務負荷の偏りについて上司が確認していると認識しております。
また、毎月人事秘書課において出退勤の状況を確認し、時間外勤務の多い職員に対しては産業医との面談指導や健康相談等を実施しています。面談の中では、現在の業務量の状況等について聞き取りをしながら、自覚症状等の把握及びそれに対する助言と併せて所属長とも連絡をしているため、職員の状況を確認できているものと考えております。
最後に、柔軟な働き方を選択できる職場づくりについてですが、各部署においてそれぞれの職員がどのようにすれば円滑な事務を遂行できるかという意識を持つこと、先ほど議員からのご質問にもございましたが、意識の変革によりそうした職員を1人でも多く増やしていくことが必要なではないかと考えます。
そのために欠かせないのがコミュニケーションであり、組織において十分なコミュニケーションが図られ、意識づけの方向性が一致することで互いにサポートし合える体制が構築されるのではないかと考えます。
今後、管理職の人事評価における業績評価の目標に、特定の職員に過度に業務が偏ることがないよう調整を行うなどの項目を設ける予定をしており、実態に即したマネジメントを管理職に求めていくことを検討してまいりますので、ご理解賜りますようお願い申し上げます。
清水晃治
真の働き方改革を実現するためには、もちろん時間がかかるかもしれませんが、先ほど私が質問書の中で読みましたように、自発的に協力し合える職場の雰囲気をいかにつくれるか、これが非常に重要な鍵になると私は経験上感じております。
そのためには、やはりさきに述べましたように業務負荷の状況を担当者と上司だけが把握するのではなく、職場全体が具体的に共有していることがすごい重要であると、これも前職の経験から強く感じております。
今の答弁を伺いますと、担当者と上司の間ではある程度共有する仕組みができている、あと人事部も含めてそれができているようには感じるんですが、やはり一番身近な職場の方々が共有すること、この部分に関してはまだいま一歩踏み込めていない気がします。身近にいる方が助けていただけるという雰囲気がその担当者の方々の安心につながりますし、働きやすい職場というふうに感じます。これがあまり度が過ぎてきますと、どうしても心の病になられる方とかも、特に真面目で本当に優秀な方々ほどなりやすいので僕は気をつけたほうがいいと思っています。
すみません、若干横道にそれましたけど、私は本当に職員さんの方々にとって働きやすい環境ができることが市民サービスのさらなる向上につながるというふうに信じていますし切に願っております。
ですから、自発的に協力し合える職場をつくっていくことに対して、もう少し当局のお考えをお聞きしたいと思うんですが、いかがでしょうか。
総務部次長兼人事秘書課長(大野茂)
先ほど答弁の中でも申し上げました人事評価での面談というのは、もちろん上司と部下においてコミュニケーションを図るということは大変重要だと認識しておりますが、そういったコミュニケーションというのは同僚の間でもやはり必要であると感じております。それというのも、職場における関わり方、そういったものを上司、部下だけではなく同僚でも意識しておることでいわゆる信頼関係というものが構築される。
そういったことから、お互いが助け合える気持ちも生まれるのではないかなと、そんなふうに思っております。
意識を変えるという取組は、職場の風土とか環境を変えていくということですので時間はかかると思いますが、それと併せて、現状こういったコロナ禍においての業務過多、そうしたものから自分の自発的な助け合いというよりも、まずは自分のことが精いっぱいで他人のことまでちょっと考える余裕がないと、そんな状況にもあるのかなと思いますが、とはいうものの先ほどの答弁とも重なりますけれども、やはりまずは人事評価の際の面談を継続していく、そういったことで時間がかかってもそういった環境を整えていくということ。
それから、我々人事からも、先ほど清水議員からのお話にもありましたが、産業医の健康相談や、それから臨床心理士によるカウンセリング、そういったものも活用しながら職場環境の改善、そういったものを図れるよう機会を捉えて呼びかけてまいりたいと、このように思っておりますのでよろしくお願いいたします。