名古屋市との合併について

 長瀬悟康

去る11月4日の全員協議会での市民意識調査の報告後、マスコミによりその結果が報道されました。その方向性は、合併をするかしないか、市の考え方や判断をはっきりさせることが目的であるかのようなものでした。

しかし、今この時期の報道としては、市民の意見や市民の持つ地域の将来像を提示することに焦点を合わせた報道になるべきだと願っておるところでございます。

さて、その市民意識調査ですが、合併に関する意見の結果は「賛成」31%、「どちらかというと賛成」25%、合計で56%でした。また、「どちらかというと反対」11.4%、「反対」11.9%、合わせて23.3%でした。

20.7%の人が回答を保留しているわけですが、賛否をはっきり回答した人で見ますと、賛成の7に対し反対は3ということになります。7対3です。これはかなりはっきりした、しっかりと受けとめるべき数字であると思います。

また、この市民意識調査では、名古屋市との合併を検討するに当たり重視することとして、「住民に対して合併を判断するための必要な情報を広く公開する」「現在だけでなく将来のまちづくりを重視して検討する」という回答が多いという結果が示されました。

今後は、市民に対して合併を判断するための必要な情報を広く公開し、将来のまちづくりを重視して検討していく必要があることがはっきりしたということです。

ここで私は、特になぜ今、名古屋市との合併を考える必要があるかという点について、市民の皆様にもう少しこの地域の実情を説明する必要があると思います。

具体的には、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピック、2025年の誘致を目指す大阪万博、2026年に愛知県、名古屋市で開催されるアジア競技大会、そして2027年のリニア中央新幹線の東京・名古屋間の開通、これらのビッグイベントを控えているという特殊な背景についての説明が必要だと思います。

つまり、これらのビッグイベントが中部圏を含む三大都市圏において進み、人口が減少していく日本において、名古屋周辺では人、もの、情報の集中が進むと予想されます。

これをチャンスと捉える人もあれば、ピンチと考える人もあるでしょうが、いずれにせよ合併するしないにかかわらず、しばらくはこの地域にかかわる人は間違いなく増加します。

しかしながら、その人々がこの地に定着するには別の魅力が求められます。仕事がある、安全・安心がある、便利がある、楽しみがある、そういった名古屋市周辺地域全体で魅力を高めることを将来像に含めて北名古屋市の今後のあり方を見据えるのか、それとも今のままで行くのか、その立ち位置によって合併に対する捉え方が全く変わります。

こうした説明をした上で、市民の皆様の考えを問うことが将来に向けて責任を果たすということであると考えます。

市長もそういった考えを持ち、あえて合併を検討してもよいのではないかと発言され、またより広い地域での取り組みに拡大する意識を持たれた上で、豊山町、清須市にも声がけをし、区制の実現を目指していくと発言されたと思います。今の段階では、余り明確な方向性を示すことが難しいということも忖度しております。

しかし、私は市民を代表して意見を述べる立場でありますから、あえて申し上げます。東京を見てください。大阪を見てください。東京駅、品川駅、新大阪駅、新幹線がとまるそれらの駅から10キロ圏内に田園風景はありません。あるのは新宿、渋谷、池袋であり、どこまでもにぎわいが続いております。

一方、名古屋駅から10キロ、10分圏にあるのが北名古屋市なのです。この都市圏としての規模の違いが都市としての魅力の違いを生み、かつて屈辱感を味わった名古屋飛ばしを生んだのです。

リニアの大阪への延伸計画が8年前倒しされる方向ですが、この名古屋圏でそれぞれの自治体が現状のように小さなエリアを割拠し、それに満足していれば名古屋飛ばしは日本の常識になってしまうでしょう。

豊山町、清須市のみならず、名古屋駅周辺自治体の市民の皆さんは、そうした地盤沈下を決して望まないはずです。

さらに、もう1つつけ加えます。細かなメリット・デメリットを論ずることをないがしろにしてはいけないというのは行政の立場ですが、こうした姿勢ではともすると本質を見失いかねません。正しい評価をもたらすには、判断のための情報公開に全体像も将来像もきちんとイメージできるような工夫が必要です。

そのために、メリット・デメリットという言葉にとらわれず、合併することで何が変わるか、しないことが何をもたらすかという視点で情報公開に臨むべきだと思います。

るる私見を述べてきましたが、これらを踏まえ、以下4点について質問をいたします。

1.冒頭でお示ししたように、市民の方々はおよそ7対3の割合で合併に賛意を示しています。この10年間、市政運営を行ってきた市長として、この現状をどのように受けとめていらっしゃいますか。市長の今後の行動方針にどのような影響をもたらすのでしょうか。

2.私ども市政クラブは「まちに出て声を聞こう、声を出そう」を合い言葉に、街頭でも市民の皆様に議会報告活動の中で合併を考えるためのさまざまな情報提供を行っておりますが、行政当局におかれましては、どのような工夫で説明を進められますか。説明責任を果たすための広報啓発のみならず、再度のアンケートやパブリックコメントなどの意見聴取等を含め、お考えがあればお示しください。

3.合併というのは一筋縄ではいかず、とりわけ清須市、豊山町との共同歩調は、過去に西春日井7町で一度失敗しているテーマであり、慎重を期すべきであることは私も認識するところであります。そこで、名古屋市、清須市、豊山町への働きかけはどのように進めていかれるのか、方法や時期についてお考えがあればお示しください。

4.行政組織内に立ち上げられたプロジェクトチームとしての合併検討委員会の動きについてであります。現状での成果と、今後、名古屋市の協力を求めた上での検討内容、市民への情報提供についてお尋ねします。

以上、可能な限り具体案、その時期等を折り込んだ答弁を期待します。再質は原則いたしませんので、思い切って答えてください。

 

 市長(長瀬保君)

大変シビアなお尋ねをいただきました。
合併して10年、融和を第1にいたしまして将来都市像であります「健康快適都市」の実現に向けましてこれまで全力で取り組んでまいったと思います。

現在は、これまでの10年を振り返りつつ、これからの将来ビジョンであります第2次総合計画の策定に向けて準備を進めているさなかでございます。

議員のご質問にございましたとおり、2027年、ご案内のようにリニア中央新幹線の開通によりまして東京、名古屋、さらには大阪間の都市間の競争、これまで以上に激化するものだと予想されるところでありまして、名古屋駅周辺では既に開発が進められておりまして、本市の影響について大変危惧しているところでございます。

こうした中にありまして、市民生活向上と地域発展のため、名古屋市を中心としたこの地域全体でその影響を受けとめ、一体となって都市計画を含めたまちづくりを進める必要があると考えます。合併に関する設問を含めた住民意識調査をあわせて行ったところでございます。

最初に、市民意識調査の結果の受けとめ方と今後の行動方針の影響についてご質問をいただきました。賛成意見が回答全体の過半数を超えたことは、北名古屋市誕生前の両町のアンケートから見ても、思っておりましたとおりであったと受けとめています。

賛否に回答されました市民の割合が賛成7、反対3という状況のもとに、市民の皆様の合併検討の意識が非常に高いと感じる一方で、賛否を回答されなかった慎重な立場の約2割の市民の方の受けとめ方が難しいと感じておりまして、北名古屋市であることのよさを感じながら、大都市になることも捨てがたいと思っておられる、そうした真摯な受けとめ方をされている方が2割の中に大勢おいでになるのではないかと、このように見受けるところでございます。

今の段階で明確な方向を述べることは大変難しい状況でございますが、今後、調査結果をしっかりと受けとめ、客観的な立場で丁寧に説明をさせていただき、市民の皆様に真剣にこの合併についてお考えいただくことを期待するところであります。

2点目にございました、どのように説明責任を果たしていくかということでございます。市民の皆様には、この10年のそれぞれの地域への思いがあると存じます。

今の段階といたしましては、その思いがどこに向かうのかを慎重に見きわめる必要があるのではないかと考えておりまして、そのために行政として客観的な立場で情報提供を努めなければならないと考えるところであります。

議員が言われるように、名古屋市を中心といたしましたこの地域の環境は著しく変化していくことが予想されます。

人口10万人規模の自治体が230万人の名古屋市の動きに追随することは難しく、財源の規模、政策的な専門性の大きな差を埋めることは困難であると思います。

名古屋市と周辺市町の格差はますます拡大していく。そうなった場合のこの地域のありようこそが、議員がご心配されていることだと理解をするところであります。

今後、名古屋市との接触が深まり、正確な情報の収集、整理にめどがついた段階で市民の皆様へ情報提供を始めることになると存じます。

その工夫には慎重にならざるを得ませんが、例えば地方自治の現場を全国的に歩き研究を深めておられる有識者の方々から、市民の皆様に客観的でわかりやすいお話をいただくなどの方法で、将来像を含めたまちづくりを考えるきっかけとしていただけたらと、そんなことも考えるところであります。

また、議員の皆様には、市民の皆様とともに大いに議論をしていただきたいと考えます。そして、その議論を結果にかかわらず、すばらしい地域づくりにつなげていくことであると、このように望んでいるところでございます。

3点目といたしましては、名古屋市、清須市、豊山町への働きかけということでありますが、前提としましては、国策として進められた平成の大合併とは違います。あくまで地方自治の延長線で進められるべきものであるということであります。

今後、それぞれの市町において、市民やその代表であります議会の動きが見えるようになってからが本当の山場を迎えるときだと思います。広域行政として密接な関係にあります清須市、豊山町には、公式な動きではございませんけれども、折を見て話を深めたいと考えております。

名古屋市につきましては、名古屋市も現在、まちづくり、いわゆる大都市構想について模索されている状況でありまして、時期は非常にデリケートな問題であります。

名古屋市の事情、北名古屋市の必要とする時期的な面がマッチングした時点で北名古屋市民の意向を伝え、ともに合併の検討が行える場を設けていただけるように働きかけてまいりたいと考えます。

4点目といたしましては、合併検討委員会の動きについてのご質問でありました。現在、行政のあり方や税や福祉の政策、施策の違いなど、多くの課題の中から市民の皆様にとって影響の大きい課題について優先的に精査を行っております。

今後も、この地域を取り巻く環境が大きく変化していく状況を踏まえながら、メリット・デメリットにとらわれず、市民の皆さんが一番関心の高い本質的な部分、つまり合併することで何が変わり、しないことが何をもたらすかという視点で、市民の皆様に将来像を描いていただく材料をお示しできるよう検討を進めてまいりたいと考えます。

いずれにいたしましても、市民の皆様の未来志向に立った判断を頂戴いただけるよう情報公開し、議会に諮らせていただきながら検討を進めてまいりたい、このように考えておりますのでご理解を頂戴できますようにお願いするところであります。

いずれにしましても、合併というのは単なる簡単な取り組みでありません。将来を見据えた本当に大きな課題であるだけに、私どもも慎重にこの問題を捉えて進めてまいりたい。

そして、さらに議会の皆様の格別なご理解と、そしてお支えを頂戴したい、そんな思いでご答弁にかえます。よろしくお願いいたします。

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