1.避難誘導訓練について 2.避難所運営訓練について

 清水晃治

令和2年第1回定例会を迎え、改めて昨年の出来事を思い返しておりましたら、頭によみがえってくるのは地震や台風といった自然災害のニュースばかりです。山形県沖地震や北海道胆振地方中等部地震など震度6以上が3回、震度5以上ですと昨年は9回発生いたしました。また、風水害でいいますと、東日本を中心に甚大な被害をもたらした台風15号及び19号など、テレビのニュースから流れてきた被災地の映像は今も脳裏に焼きついております。

被害に遭われた方々が、一日も早く通常の生活に戻ることができますことを心より願うばかりです。

さて、このように数か月たった今でも影像が脳裏に焼きついているということは、それだけ私にとって衝撃的であり、またその圧倒的な破壊力に大きな恐怖を感じた証拠だと私は感じております。

私たち人類は、科学技術を進歩させることで多くの恐怖から解放されてきました。

しかし、どんなに科学技術が進歩しようとも、地震の原因となる地殻変動を止めることはできないでしょうし、台風を消滅させることもまた不可能なことだと思うのです。

自然の持つエネルギーはそれだけ桁違いであり、到底人類によってコントロールできるものではなく、私たちは将来にわたり自然の驚異と共存せざるを得ないと私は考えております。

では、私たちには何ができるのでしょうか。それは災害が起きたときに被害をできる限り小さく抑えられるようにインフラを整備し、自助・共助・公助の仕組みをつくり、そして発災時でも実際に機能するように日頃から備え、訓練をすることだと私は思います。

さて、現在、本市において毎年総合防災訓練と水防訓練を実施し、消防団、水道企業団、赤十字奉仕団、建設業協議会、防災ボランティア等が一堂に会し、実動訓練として長年にわたって行われております。

これらの訓練により、参加された各種団体等の支援技術の錬磨や防災意識の高揚など、多くの成果が得られていることも確かでございます。

また、各自治会の自主防災会がアイマスクや車椅子を使用して要支援者役に扮した地域の方々を引き連れ、訓練会場まで引率する避難誘導訓練も同時に行っていただいております。

しかし、訓練に参加した要支援者はあくまでも役に扮した健常者の方々です。

私は昨年、第3回定例会の一般質問において、災害時に最も大切なことは、誰一人漏れることなく命を救い出すことであると述べさせていただきました。

総務省消防庁の災害時要支援者の避難支援に関する検討会がまとめた報告書によりますと、平成23年の東日本大震災においては、被災地全体の死者数のうち65歳以上の高齢者の死者数が約6割を占め、障害者の死亡率は被災住民全体の死亡率の約2倍に上ったと記されております。

その要因としましては、在宅や地域で生活をしていた災害時要援護者に必要な避難情報が届かなかった、避難すべきか否かを判断することができなかった、必要な避難支援を受けられなかった、寝たきりの状態や老老介護により自力や介助者の力だけでは避難することができず避難することを諦めた。

また、社会福祉施設や病院等、要支援者にとって避難場所となり得る場所そのものが被災したことにより多くの要支援者の命を奪うことになり、被災住民全体より死亡率が高くなったと分析されております。

こうした東日本大震災の教訓を踏まえて、2013年8月に災害対策基本法が改正され、要介護高齢者や障害者等の避難行動要支援者や避難支援等関係者の犠牲を抑えるために、避難行動要支援者名簿を活用した実効性のある避難支援がなされるよう、内閣府は避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針を策定しました。

しかし、現在、本市で行われている避難誘導訓練は要支援者の役に扮した健常者により行われており、実際災害が発生した際に要支援者の方々を漏れなく避難誘導させるための訓練としては不十分であると私は感じております。

また、地震災害時の避難行動には福祉関係者の到着を待つといった時間的猶予は許されず、必要とされる支援内容は個々の要支援者により異なるため、総合的な支援体制の構築と日頃からの実効性のある訓練が必要であると私は考えております。

そこで、当局にお尋ねします。

1.避難行動要支援者名簿には、具体的にどのような方を何名登録しておりますか。
2.避難行動要支援者名簿を活用した避難支援体制は、現在どのように計画しておりますか。
3.今後、要支援者の避難誘導をより実効性のあるものにするためには、どのような仕組みや訓練を行っていく計画か、お考えをお聞かせください。

一方で、元内閣府障害者制度改革担当室長で、現在、被災地障害者センターくまもとの事務局長を務める東 俊裕さんは、2016年に発生した熊本地震後にNHKの取材を受けて、避難所へやってきた車椅子の障害者がここは階段ばかりだからと断られた、発達障害で自閉症を持つ子供が水の配給の列に並べないため、親が子供の分を代わりに求めましたがもらうことができなかった、迷惑をかけるからと避難所を追い出されたなど、災害の中で障害者が取り残される状況が東日本大震災のときと何ら変わっていないと憤り、この要因は避難所を管理運営する方、また避難所に避難している一般の方々の中にまだ障害者に対する配慮が足りないことを要因として述べられておりました。

また、避難所には、人、緊急物資、情報が集まり、そこから仮設住宅や復興住宅といった復興に至るまでの道のりができてくるわけですが、その公的支援の最初の基点になる避難所が利用できないと支援の網の目からこぼれてしまうと窮状を訴えられておりました。

大規模災害が発生した際に避難所にやってくる方は、こういった障害者の方だけではありません。

妊婦や乳幼児、外国人、傷病者、また被災者を支援する自衛隊やボランティアの方々もやってきます。

このように避難所の管理運営業務は多種多様にわたり、行政だけでは行い切れず、地域の事情を理解している地域の方々自身が中心となり行っていただく必要があるわけです。

現在、鹿田在住の議員4名が参加する鹿田地域防災サポーターでは、自主防災訓練の一環として、避難所運営ゲーム(HUG)を用いて地域の方々に避難所運営の模擬体験を行っております。

この避難所運営ゲームは、避難者の年齢や性別、国籍やそれぞれが抱える事情が書かれたカードを避難所の体育館や教室に見立てた平面図にどれだけ適切に配置できるか、また避難所で起こる様々な出来事にどう対応していくかを模擬体験するゲームです。

プレーヤーはゲームを通して避難者の属性を考慮しながら部屋割りを考え、また炊き出し場や仮設トイレの配置などの生活空間の確保、視察や取材対応といった出来事に対して自由に意見を述べ、かつ話し合いながらゲーム感覚で避難所の運営を学ぶことができるものになっております。

私は避難所運営の訓練を今後より実効性のある訓練とするためには、さきに述べた避難誘導訓練と避難所運営ゲームを組合せて行うことが有効であると考えております。

総合防災訓練や水防訓練を行う会場に関わる地域の方々を避難所の受付担当であるプレーヤーに割り当て、実際に避難してきた要支援者や地域の方々をゲームのカードに見立てることで、災害が発生した際の避難所受付及び避難者の特性に応じた体育館や教室等への割りつけ及び誘導、また傷病者に扮した方には防災訓練会場内で行われている救護班への誘導といった同時に開催されている他の実動訓練ともリンクさせることで、より総合的で実践的な総合防災訓練となり、また地域の方々に対しての防災意識の高揚にもつながると考えております。

そこで、当局にお尋ねします。

大規模災害時の避難所運営として、どのような訓練を行っていく計画か、お考えをお聞かせください。

 

 防災環境部長(桑原邦匡)

避難誘導訓練について、お答えいたします。

これまでの水防訓練や総合防災訓練では、避難行動要支援者の避難誘導訓練につきましては、いわゆる劇場型訓練として実施してまいりました。

災害対策基本法の改正により、高齢者、障害者、乳幼児、その他の特に配慮を要する方を要配慮者と呼び、そのうち災害が発生し、または災害が発生するおそれがある場合に自ら避難することが困難な者で、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため、特に支援を要する者を避難行動要支援者と定義し、当該名簿の作成が義務づけられております。

1点目の避難行動要支援者名簿の対象者及び登録人数でございますが、福祉部が所管する北名古屋市災害時要援護者支援制度では、その対象を65歳以上の独り暮らしの方、65歳以上のみの世帯の方、身体障害者手帳1級または2級を所持している方、療育手帳A判定を所持している方、在宅で介護保険の要介護4または5と認定されている方とし、現時点登録人数は3,979名でございます。

2点目の避難行動要支援者名簿を活用した避難支援体制でございますが、本人から同意が得られた要支援者につきましては、毎年4月に民生委員・児童委員及び自主防災会といった地域支援者に名簿を提出しており、災害対策基本法により地域支援者は防災訓練及び災害時には名簿を活用し要支援者の安否確認、救出活動、避難誘導等を行う計画になっております。

3点目の実効性のある要支援者の避難誘導の仕組みや訓練でございますが、災害時において誰一人取り残さないためには、要支援者本人をはじめ民生委員・児童委員といった福祉関係者、高齢者・障害者施設、自主防災会、行政による組織的対応が不可欠と考えております。

具体的は、本市において要支援者の居住先を地図データにプロットし、避難時の配慮事項を記載した個別計画を作成するとともに、避難行動に必要な情報共有に向けて、例えば防災士の資格を有する防災担当職員がファシリテーターとしてカフェ方式による話合いの議論など、地域に見合った地区防災計画の作成支援を行ってまいります。

また、次年度の総合防災訓練では、情報共有された個別計画を活用し、自主防災会、福祉関係者が把握している要支援者の避難訓練や孤立する福祉・障害者施設入居者の救出・避難訓練を通しその実効性を検証いたします。

さらに、水防訓練の要素も包含させるため、大規模地震による橋梁等の崩落を想定し、陸上自衛隊等との連携による総合防災訓練として調整してまいりますので、ご理解賜りますようお願い申し上げます。

 

 防災環境部長(桑原邦匡)

避難所運営訓練について、お答えいたします。

市主催の総合防災訓練のほかに、小・中学校では、学校生活時における地震や火災を想定した避難訓練や保護者への引取り下校が実施されております。課題でありました要配慮者に解放できる教室をあらかじめ選定した学校施設利用計画も全ての小・中学校で策定していただけました。

また、自主防災会、PTA等では仮設マンホールトイレの表示設置や夜間防災訓練での炊き出しなど、地域の実情に応じた訓練が行われ、災害に対する機運の高まりを感じているところでございます。

引き続き、地域での訓練に防災担当職員を派遣し、自助・共助・公助の啓発に努めてまいります。

大規模地震の発生時は、市民同様に行政機関も被災し、発災後、市職員も直ちに全員参集できるとは限りません。

議員からご指摘がありますように、避難所の運営に関しては自主防災会や避難者自らが運営できるように訓練を重ねることが重要でございまして、その手法として避難所運営ゲーム(HUG)を通し楽しみながら学べることは、共助の意識づけにも大変有効であると認識しております。

4点目の大規模災害時における避難所運営訓練の計画でございますが、学校生活時に地震が発生することも十分に想定され、これまで学校、行政、地域が別々で実施してきた訓練を同じ会場、同じ時間軸により融合させた新たな防災訓練として計画していく所存でございますので、ご理解賜りますようよろしくお願いいたします。

 

 清水晃治

ただいまの答弁で、学校、行政、地域が同じ会場、同じ時間軸で融合させた新たな防災訓練というふうに答弁いただきましたけど、具体的にどのような内容を計画されているのか、お聞かせいただけますでしょうか。

 

 防災環境部長(桑原邦匡)

来年度の防災訓練につきましては、2つの地震想定の防災訓練を現在のところ考えております。

1つ目の質問にもございました避難誘導を中心としまして、福祉施設からの避難誘導活動をテーマといたしまして、中江川付近で秋口に1つ目の訓練を計画中でございます。

また、2つ目の質問にもございました避難所の運営に関して、ここに重きを置きまして、来年度は師勝西小学校におきまして、また地元の鹿田自主防災会の協力もお願いしていく考えでございます。

具体的には、地震が授業中に発生したということを想定しまして、児童の避難訓練、そして保護者への引渡し、そして同校における避難所の開設を進めますが、さっきも答弁いたしました学校施設利用計画の検証をするためにも、教職員と市の職員が連携して避難所の開設を行います。

そこに、さらに地元の自主防災会や民生委員の方々が要支援者名簿を活用して避難者の方々の安全な誘導を図り、避難生活を体験していただくというような2つの実務的な、また課題の洗い出しにつながるような訓練を計画してまいりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 

 清水晃治

今お答えいただいた内容ですと、その地域の方々が避難所の例えば受付をする。

その受け付けをして、来た方々を各学校の教室に割り振るというようなことを質問の中で入れさせていただいたんですけど、今の計画の中にはそういった内容というのは盛り込むお考えというのはあるのでしょうか。ちょっとうまく聞き取れなかったのかもしれないですけど、お教えください。

 

 防災環境部長(桑原邦匡)

答弁が不十分でございました。

先ほども答弁させていただきましたように、行政職員が避難所の開設後の運営まで手が回るとは到底想定できません。

そんな中で、地域の自主防災会や、また地域の避難者の方々による避難所の運営というのは実際お願いをしていかなければならないと考えております。

したがいまして、防災訓練の中でも、先ほど議員からもご提案のありましたHUG訓練など、ぜひとも議員各位のご支援、ご協力を頂戴しましてこの訓練の中に取り入れたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

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