熊澤真澄
ICT、AIを活用した学校教育について伺います。
2カ月ほど前になります。
ある新聞が「日本、デジタル教育に遅れ!」という見出しで、経済協力開発機構いわゆるOECDが行った国際教員指導環境調査結果について報じていました。
それによりますと、日本は学校段階で生徒にICT、つまり情報通信技術を活用して教えている教員の割合は18%、何と下から2番目であります。
社会のデジタル化への対応に比べると、学校教育の現場では立ちおくれているという指摘です。
ところが、同時期の別の新聞では、「塾・スポーツ、先生はAI。個人の弱点分析、改善を促す。」との見出しの特集記事がありました。
この記事によりますと、ある塾では、中高生がそれぞれAI、いわゆる人工知能搭載のタブレットに向かって勉強しているそうです。
タブレットは、解答にかかった時間などのデータから一人一人のつまずきを解析し、原因を探ります。そして、弱点を克服できるようさかのぼって問題を出し、講義動画を流します。
この方法で学んだ生徒は、センター試験の数学の得点が平均5割上昇したそうです。塾の先生は、基礎学力を短時間で身につけ、余った時間で他の力を伸ばしてほしいとコメントしています。
いずれにしても、国立情報学研究所、新井教授は、先が見えない時代だからAIも含めて、あれもこれもと全ての能力を備えなければと焦りますが、基礎基本が欠落していてあれこれやっても身につきません。
基礎基本が大切です。教科書や新聞記事を正確に読めれば学力が伸びることがはっきりとしていると断言しておられます。
学習しても学力や生産性が伸びないのは、説明文を正確に読めないためだと警鐘を鳴らし、急がば回れ、AIに仕事を奪われないためには一人一人の基礎基本となる読解力、論理力などの力を地道に鍛えることが近道だと別の新聞で訴えております。
また、子供にとって学びとは、現在及び将来の社会を生き抜く力を身につけることを意味し、それはこれまでも生涯にわたって学び続ける力として表現されてきました。
こうしたことを背景に、国としては、これからのICT、AIの時代を生き抜くために必要な力を育て、深め、子供の力を最大限に引き出すことが重要だとし、「誰一人取り残すことのない、公正に個別最適化された学び」をキャッチフレーズに、ICTを基礎とした先端技術や教育ビックデータの効果的な活用を目指しています。
既にその基礎づくりは官民挙げてスタートさせており、この加速化を図ろうとしています。
先ほど引用しました新聞記事にありますように、基礎基本の習得については既に一部AIによる学習が実用化されています。
国は、6月末に学校教育の情報化の促進に関する法律を公布、施行し、学校教育の情報化推進を一気に加速し、令和7年には世界最先端のICT教育環境を実現するとしています。今年度中にそのロードマップを策定すると宣言するほどに技術的には確立し、後は実践だと各教育委員会や学校現場に強い決意で迫っているようです。
AIの進化は、子供たちがみずからの学習ニーズに応じて、いつでもどこでも、誰とでも学習することを可能にします。また、学年や学習指導要領、教科書に制限されず、どの教材をどこからでも、どのような順序でも学べるようになるとも言われています。
そこで質問させていただきます。
1つ目は、個別最適化された学び、一人一人の学習データを分析し、一人一人に最も適した課題を提示し管理すること等ができるソフトはどの程度まで実用化されているのか、学校教育の視点からお聞かせください。
2つ目は、市において各学校に児童・生徒用タブレットは各学校40台あるとお聞きしています。個別に最適化した学びを行うには、タブレットが1人に1台常時必要となるが、スマートフォンの活用も含めてどう対応するのかお聞かせください。
3つ目は、国は法律に基づき年度内に学校教育情報化推進計画を策定し、令和2年度から計画を実施するとしているが、本市の学校教育情報化推進計画策定予定についてお聞かせください。
将来を担う北名古屋市の子供のために、以上、3点を質問とさせていただきます。
教育部副参事兼学校教育課長(田島孝道)
学びの管理ソフトの実用化について、お答えいたします。
岐阜市が教育関連の企業と平成29年度、平成30年度に中学生300人を対象に1人1台学習用タブレットを貸与して行った実証研究では、生徒が間違えた問題を解き直しているか、学習内容、解答時間などを教育的、科学的知見に基づいて分析し、可視化されたグラフデータなどが教員、生徒にフィードバックされ、教員が指導改善に有益な課題を見つけることができ、生徒の学力向上においては有効性が認められています。
例えば、正答率が全体で7ポイント上昇し、特に解き直しをしっかり行ったグループは13ポイントも高い結果が出ています。
また、文部科学省は、次世代学校支援モデル構築事業を平成29年度から今年度まで小・中学校19校で実証研究を行っているところです。
出席情報、健康観察記録、保健室利用記録、テスト結果などの校務系データと、デジタルドリルなどの学習履歴や児童・生徒に実施したアンケート結果などの授業・学習系データの効果的なデータ連携活用モデルが実証段階に入っています。
今後、一、二年の間に実用段階に入っていく状況です。
熊澤真澄
先ほど、今後一、二年の間に実用段階に入っていく状況と答弁がありました。
そこで、実用化され北名古屋市においてAIなどの先端技術を導入することで先生の仕事がAIに取ってかわられたり、先生の多忙化に拍車をかけたりするのではないかと危惧いたしますが、当局の考えをお聞かせください。
教育部副参事兼学校教育課長(田島孝道)
学習指導要領、教育課程を熟知した教員の経験に基づいて、児童・生徒の9年間全体を見通した教員の適時適切な指導等、あとAIなどの最先端技術がマッチングすることで理解や定着の向上が図られ、それによって生み出された時間の多くを今度思考力などの指導にかけることができますので、より質の高い教育が実現すると考えております。
例えば、読み書き計算など基礎基本の習得にこれまで問題の作成、印刷、生徒から回収したプリントの採点などに教員が費やす時間を、タブレットを活用したデジタルドリルなどを利用することで指導の徹底と定着が図られていきます。
その分は児童・生徒が主体的、対話的で深い学びを実現するための教育指導に教員が時間を使うことができるようになるというふうに考えております。
ご理解を賜りますようお願い申し上げます。
教育部副参事兼学校教育課長(田島孝道)
生徒用のタブレット端末への対応について、お答えいたします。
まずスマートフォンは現在6インチほどの画面サイズが主流のため、小・中学校の学習利用には不向きと考えます。
今後のタブレット端末への対応については、平成30年度以降の学校におけるICT環境の国の整備方針で、3クラスに1クラス分程度の学習者用コンピューター整備が目標とされています。
一方、来年度から小学校で使用する教科書では、既にQRコードやURLで参考資料、補助教材などを瞬時に見ることができるようになっています。
ことし6月に文部科学省がまとめた新時代の学びを支える先端技術活用推進方策においても、ICTの活用は必須のものとなりつつあると記載されており、世界最先端のICT教育環境実現に向けて、文部科学省が今年度中に策定するロードマップを注視してまいります。
いずれにしましても、1人1台のタブレットの利用環境を視野に、国の財政措置を見きわめながら次期リプレイスにあわせて検討してまいりますので、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。
熊澤真澄
先ほど、1人1台のタブレットの利用環境を視野に、国の財政措置を見きわめながら次期リプレイスにあわせて検討してまいりますとの答弁がありましたが、私はもう一つ危惧しておるのが、先生方がタブレットなどのICTを活用しスムーズな指導がなされることも重要な検討課題だと思います。
この点について、当局の考えをお聞かせください。
教育部副参事兼学校教育課長(田島孝道)
現状、各学校パソコン教室に40台のタブレットがありますが、教員全体を見渡すと使いこなしているというか、使い方に濃淡がありますので、もっと使いこなせるようにということで指導してまいりたいと思っております。
この先、ICTの活用導入に当たっては、教育委員会としましては教員に向け利用しやすいマニュアルの整備、計画的な研修を行うことで円滑な運用指導というのは可能かと思います。
授業中のICT活用支援や機器の管理、研修のサポート、あと校内での連絡調整、学校と教育委員会との連絡調整をとることができるようなICT支援員、そういった検討も必要と考えております。ご理解賜りますようお願い申し上げます。
教育部副参事兼学校教育課長(田島孝道)
本市の学校教育情報化推進計画策定予定についてですが、国が年度内に策定する計画に沿って教育委員会も来年度の早い時期に策定してまいりたいと思いますので、ご理解賜りますようお願い申し上げます。