浅利公惠
最初に、地域の文化財の保護、継承と、文化芸術の推進に向けた取組についてです。
8月8日に宮崎県日向灘沖地震を受けて、南海トラフ地震の想定震源域での巨大地震注意情報が発表されました。その後、呼びかけの期間は終了しましたが、南海トラフ地震と聞いた瞬間、これまで本市地域が育んだ生活、風土、歴史が地震災害により損失した荒涼とした悲惨な光景が脳裏によぎりました。
本地域には、先人たちが長い年月の間、地道な努力によって大切に守ってきた有形・無形の歴史文化遺産が多数残されています。
国指定重要文化財である高田寺本堂、木造薬師如来坐像をはじめとして国登録文化財6件、県指定文化財5件、市指定文化財36件が、所有者や地域の方々の不断のご努力によって受け継がれています。
また、指定された文化財以外にも、本地域には仏像、建造物、祭礼、伝統行事、伝統芸能等、多様な有形・無形の文化遺産が地域の方々の手によって大切に継承されております。
また、本市には名古屋芸術大学が所在し、日々の暮らしの中で文化芸術を身近に感じることができる環境にあるとともに、多くの地域の方々や団体が多様な文化芸術活動に取り組まれ、暮らしの潤いや豊かさの向上、地域の活性化にご尽力いただいています。
こうした歴史文化遺産、文化芸術に関わる多様な資源は、創造的で活力ある社会を構築し、文化芸術の多様な価値(本質的価値及び社会的、経済的価値)を創出して未来を切り開き、社会的、経済的価値を文化芸術の継承、発展及び創造に活用、好循環させることができると考えます。
本市では、文化芸術の推進を担う生涯学習課、文化財保護を担う歴史民俗資料館、地域を知り学ぶための地域資料の収集と公開を担う図書館とが一体となって、市生涯学習・文化芸術推進計画に基づいて「ともに創り、育む文化芸術の伸展」の実現に向けた取組を進められているところであると思います。
そこで、2点質問させていただきます。
1点目、地域に根差した文化財の価値を見いだし、高め、地域の財産として継承していくための取組をお尋ねします。
2点目、生涯学習・文化芸術推進計画が目指す地域の過去から現在までの文化芸術に関わる資源を活用した文化芸術の推進に向けた取組とその方向性をお尋ねします。
次に、全国学力・学習状況調査についてです。
文部科学省が毎年実施する全国学力・学習状況調査の目的は、義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童・生徒の学力や学習状況を把握、分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図るとともに、学校における児童・生徒への学習指導の充実や学習状況の改善等に役立てる。さらに、そのような取組を通じて、教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立することと示されています。
調査の対象を小学6年生と中学3年生とし、令和6年度においては、小学校調査は国語と算数、中学校調査は国語と数学として4月18日に実施されました。
結果の概要については文部科学省が公表しており、国語、算数、数学の教科についての課題や質問調査結果の分析として、「課題の解決に向けて自分から取り組んでいるのか」や「ICT機器の活用」に関する分析、「挑戦心、自己有用感、幸福感」や「学校外での過ごし方」などが分析されています。
あわせて、都道府県別及び指定都市別の調査結果資料が公表されており、国では、全国学力・学習状況調査の目的に沿って、児童・生徒の学力や学習状況を把握、分析し、教育施策の成果と課題を検証していることが分かります。
各自治体については、全国学力・学習状況調査の実施に当たり、毎年、教育委員会定例会での議決を経て実施していますが、併せて結果の取扱いとして学校別調査結果の平均正答数や平均正答率の公表は行わない取扱いとすることなどが議決されています。
本市においては、令和6年度全国学力・学習状況調査の参加や結果の取扱いについてを令和6年2月8日の教育委員会定例会で議決されているところですので、結果については公表されないものの、児童・生徒への学習指導の充実や学習状況の改善等に役立てていることと思います。
そこで、4点質問させていただきます。
1点目、令和6年度全国学力・学習状況調査の結果をどのように捉えていますか。
2点目、学力向上を目指すに当たっての現状としての課題は何でしょうか。
3点目、過去において学力向上のためにどのような取組を行っていますか。
4点目、児童・生徒質問紙調査及び学校質問紙調査の結果において、どのように受け止めているか、お聞かせください。
次に、西春小学校の研究発表会への取組についての質問に移ります。
令和5年第3回定例会において、市政クラブの井上一男議員が、西春小学校の研究発表会について一般質問を行いました。
研究発表会の内容をはじめ、研究の狙いやICTの活用との関連性、さらに西春小学校の研究を全市的な取組としていくことや、研究内容及び成果を市内他校へ展開することについての考えを問いました。
答弁では、研究の主題を「言葉による見方・考え方を働かせ、国語で正確に理解し、適切に表現できる子の育成」として、国語科を研究しているとの答弁がありました。
また、ICTの活用との関連性では、国語の学習者用デジタル教科書を活用しており、自分に適した方法で課題に取り組む際に大変有効である、研究を西春小学校だけのものではなく市内の小・中学校も参画し総力を挙げて北名古屋市の子供たちの力を伸ばしていく絶好の機会と捉えているとの力強い答弁がありました。
学習指導の研究発表は、11月20日に愛日地方教育事務協議会を構成する本市を含めた11市町のほか、県内、県外から学校関係者約500名が参加して開催するとお聞きしております。
現在、研究発表会まで3か月を切っており、研究の仕上げの段階となっているのではないかと推測します。
研究を始めてから1年5か月が経過しましたので、研究による成果をつかんでいることと思います。
そこで、4点質問させていただきます。
1点目、研究は実際にどのように進めているのでしょうか。
2点目、国語科の学習者用デジタル教科書を活用することによる有効性を、具体的にお聞かせください。
3点目、11月20日の研究発表会はどのような内容で開催するのでしょうか。
4点目、今回の研究を通して、今後の北名古屋市の教育にどんな好影響を与えられると考えているか、お聞かせください。
教育部生涯学習課長(祖父江由美)
地域文化財の保護・継承と文化芸術の推進について、お答えいたします。
1点目の地域文化財の保護・継承に関して、ご質問にありました文化財の価値を見いだし、高め、継承していくためには、調査・研究と成果の発信が重要であるとともに、多くの方々が文化財に身近に接し、親しむ機会を提供することが不可欠と考えております。
長い年月をかけて育まれ、受け継がれてきた環境の中で接することこそが、文化財の本当の価値を知ることにつながると思っておりますので、多くの方々がそれぞれの文化財が所在する現地を訪れ、文化財に触れる機会の提供をこれまで以上に広げてまいります。
特に、地域の未来を担う子供たちが、地域の財産である文化財を通して地域の文化や歴史への誇りと愛着を深め、未来へ受け継いでいく担い手となることを促すような体験、学習の機会を提供できるよう取り組んでまいります。
また、地域に関する様々な事象の意味や価値を見いだすという点において、図書館も重要な役割を担っております。
地域理解を深め、地域らしさを共有するための重要な情報資源である地域資料の継続的な収集、保存を進め、地域の将来を展望するためのアーカイブとしての活用も検討してまいります。
次に、2点目の文化芸術の推進に向けた取組と方向性についてでございますが、取組につきましては地域の活動団体を講師として、子供たちに地域で継承されている文化芸術を体験する機会となる子ども文化体験教室を開催するとともに、小・中学校へ向けた音楽や落語等の文化芸術に関するアウトリーチ事業も実施しており、子供たちが芸術や伝統芸能への関心を高める機会を提供しています。
また、北名古屋出身の若手アーティストのコンサートや音楽を体験する講座の実施、地域の文化芸術団体が実施する事業への支援を行うなど、誰もが身近に文化芸術に触れられるような多様な機会の提供に努めております。
推進計画に掲げる「ともに創り、育む文化芸術の伸展」に向け、文化財の保護や伝統文化の教育を行うとともに、次代を担う子供たちの豊かな心の育成に向け多様な文化芸術に触れる機会を提供し、地域の文化芸術を振興、育む風土を醸成していきたいと考えておりますので、ご理解賜りますようお願い申し上げます。
教育部長(鳥居竜也)
全国学力・学習状況調査について、お答えいたします。
1点目の令和6年度全国学力・学習状況調査の結果をどのように捉えていますかについてですが、小学校においては国語、算数ともに全国平均と同程度、中学校においては国語、数学ともに全国平均を上回り、特に数学は全国の平均正答率を4.5%上回っており、小学校からの学習の積み重ねの成果と捉えております。各学校ごとに、正答率の低かった問題については各教科部会で協議し、今後の授業改善に努めていく必要があります。
なお、西春小学校で進めている研究授業は、この授業改善に必要となるPDCAサイクルを実践している取組であることを申し添えます。
2点目の、学力向上を目指すに当たっての現状としての課題は何かについてですが、児童・生徒の学力を向上させるには、教員の授業力の向上を図ることが重要となります。若手職員が増えている現状を踏まえ、ベテラン教員の指導技術をいかに若手教員に継承していくかが課題となっております。
また、児童・生徒の家庭での学習習慣の定着、スマートフォンやゲームの利用時間等による生活習慣の乱れを課題と捉えています。
3点目の、過去において学力向上のためにどのような取組を行っていますかについてですが、教員の授業力向上を図るため、学校訪問や現職研修において教育委員会による授業参観を実施し、指導、助言を行っております。
また、若手教員の指導力向上に向けて、2年目、3年目の教員を対象に、市内小・中学校を5つのグループに分けて研究授業を行っております。研究授業では、いかに分かりやすく子供たちに伝わる授業だったかなどを話し合い、指導主事や教務主任が指導、助言を行っています。
市採用の学び支援講師に対しても、年3回の研修会を行うとともに、どのように授業を関わっているかなども情報を交換しています。
なお、中学生に対しては、授業後や長期休業期間中にアフタースクール教室を実施し、学力補充の機会を設けております。
4点目の児童・生徒質問紙調査及び学校質問紙調査の結果について、どのように受け止めているかについてお答えいたします。
小学生の家庭での学習時間が全国平均を下回っております。家庭での動画視聴、ゲームの時間については、小学生、中学生ともに全国平均を大きく上回っておりますので、家庭教育の向上が必要になると捉えております。
児童・生徒の心が大きく成長する義務教育の段階において、教員と児童・生徒、家庭との連携を図り、日頃からコミュニケーションを大切にし、友達同士の会話が生まれるような授業や学級経営を行えるよう教員の力量向上に努めてまいりますので、ご理解賜りますようお願い申し上げます。
教育部長(鳥居竜也)
西春小学校の研究発表会への取組について、お答えします。
1点目の研究はどのように進めているかについてですが、研究主題を基に設定した目指す子ども像の達成に向けて、児童の国語の力を伸ばすことができる手だてを考え、研究授業にて実践を繰り返しております。
研究授業終了後には研究協議会を行い、手だての有効性について検討し、次回の実践につなげています。
研究の1年目の令和5年度は年間で約100本、2年目の令和6年度は1学期まで約20本の研究授業を行いました。
その際には、国語科指導やICT教育の専門家や市教育委員会教育指導員を加え、市内の一部の校長や教頭が外部アドバイザーとなり、分担しながら研究授業を参観し、指導、助言を行っております。
このような実践を繰り返すことにより、教員の授業力も向上してきております。
2点目の国語科の学習者用デジタル教科書を活用することによる有効性を、具体的にお答えいたします。
1つは、自らの考えの形成と根拠を明確にした表現が可能となります。
デジタル教科書の書き込み機能では容易に書き込みを削除することができるため、間違うことを恐れずに教科書に書き込む活動が促され、児童自らの考えを形成することに役立ちます。
2つ目は、色分けによる登場人物の行動や気持ち、文章構造の把握が容易になります。
ルールに基づいた色分けによって、文学的な文章では登場人物の行動や気持ちを把握するしやすくなるほか、説明的な文章では文章構成が把握しやすくなります。
3つ目は、ほかのICTツールと組み合わせて、互いの考えを比較する対話的な学びが可能となります。
書き込みを行ったデジタル教科書をそのまま相手に見せたり、大型掲示装置等のICT機器と組み合わせたりすることで、互いの考えを比較する対話的な学びが可能になります。
以上のことから、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を図ることができるため、とても有効なツールであると考えております。
3点目の、11月20日の研究発表会はどのような内容で開催するかについてですが、当日は12時15分より開始する午後日程で開催いたします。
来校者への歓迎行事として、体育館にて全校児童による合唱を披露し、その後各クラスにて公開授業を行います。
再び体育館で全体会をして、開会行事や研究発表、研究協議を終えた後、NHKアナウンサーを講師に迎え記念講演を行います。
4点目の、今回の研究を通して今後の北名古屋市の教育にどのような好影響を与えられると考えているかについてお答えいたします。
今回の西春小学校の研究により、言葉を大切にし、児童は自らの思いや考えを表現し伝え合おうという態度を身につけることができ、将来社会に出てからの生きる力の醸成の一助になったと思います。
また、今回の西春小学校の教員育成の視点からも、教員の授業力向上に大いに役立つものでございました。
数多くの研究授業を積み重ねることで、着実に西春小学校の教員は力をつけることができました。
研究発表会終了後には、今回の研究で培ったノウハウを現職研修の機会を設けて市内の小・中学校に広く伝達し、市内の児童・生徒の国語力の向上、教員の授業力向上に役立てていきたいと考えております。
また、市内にとどまらず全県に向けて研究の成果を発信することで愛知県内の指標となる研究を進めており、さらに高めてまいります。ご理解賜りますようお願い申し上げます。