桂川将典
持続可能な地域経営に向けた地域コミュニティの再構築と本市行政が起こすべき構造変革についてをお尋ねいたします。
大きく変動する社会情勢の中で、本市が将来にわたり持続可能な地域経営を維持できるか否か、その根幹に関わる地域コミュニティの再構築と行政が起こすべき変革について、明確なグランドデザインを問うべく質問をいたします。
まず大前提とし共有すべきは、全国で進む自治会の加入率低下や担い手不足という問題の本質についてであります。これは決していわゆる住民の地域意識の低下といった個人や地域の精神論のせいではありません。時代そのものが不可逆的に変化しているのです。
総務省が公表した地域コミュニティの持続可能性と活動のデジタル化に関する研究会報告書に示された具体的な公的データと、その出典をここに明示いたします。
かつて地域活動の主要な担い手であった女性の就業率は、総務省の労働力調査によれば、平成13年の57%から令和元年には70.9%へと18年間で13.9ポイントも大幅に上昇しております。
さらに、高齢者の就業率も、同じく総務省の労働力調査において、65歳から69歳の方の就業率が実に49.6%と、約半数が定年後も働き続ける社会構造となっております。
加えて、国立社会保障・人口問題研究所の日本の世帯数の将来推計によりますと、単身世帯が全世帯に占める割合は、2015年の34.5%から2040年には39.3%にまで増加すると見込まれております。
こうした共働き世帯の増加、高齢者の就労化、単身世帯の急増は、全て国が統計で示している動かせない社会背景でありまして、住民の可処分時間が物理的に減少していることを意味しております。
その直接的な結果として、総務省の自治会・町内会等に関する実態調査が示すとおり、全国の自治会加入率は平成22年の78.0%から令和2年には71.7%へと10年間で6.3ポイント確実に低下し続けております。
本市においても、今や市民の約3割が自治会網の外に置かれているのが前提条件であります。
ここで、自治会の衰退に対して我が北名古屋市行政はどのような変化を起こすべきなのでしょうか。
その論点は極めて明確です。昭和から令和への転換です。地方自治法第260条の2が示すとおり、自治会等は加入・脱退が自由な私法人、すなわち任意団体であり、行政組織の一部としてはならない存在です。にもかかわらず、本市行政は、各種公的計画において自治会を市民全員へ行政サービスや情報を届けるための都合のよい末端実行インフラとして位置付けてまいりました。
自治会が衰退しているのに、行政の側がこれまでの体質を変えようとしないと、これこそが今私たちの目の前にある真の構造的危機であり、行政が起こすべき最大の変化とは、地縁組織を便利使いする姿勢からの脱却と、行政自身の役割の再定義だと私は考えております。
厚生労働省の児童虐待相談対応件数のデータによれば、地域での対応が急がれる児童虐待の相談件数は10年間で実に3.6倍に急増しております。
また、民間のシンクタンクであるニッセイ基礎研究所の推計データによれば、高齢者の孤立死も10年間で約1.8倍に増加するなど、地域福祉のニーズは極めて複雑化、深刻化しております。
さらに、防災面においても、気象庁のアメダス観測データによれば、1時間に50ミリ以上の短時間強雨の年間発生回数が1976年からの10年間と比較して直近の10年間では約1.5倍に増加するなど、激甚化する気象リスクへの対応が迫られております。
このように、地域で対応すべきニーズが急増する一方で、現実に地域活動を支える現場からは、公益財団法人日本都市センターの調査が示すとおり、役員や運営の担い手不足を訴える声が86.1%、役員の高齢化を訴える声が82.8%と、既に崩壊寸前の悲鳴が上がっている状態です。
北名古屋市の行政が、この地域ニーズの急増と現場の限界という決定的なギャップから目を背け、従来の自治会インフラに頼り続けるならば、それは特定の地域や未加入の市民に対する公助の空白を放置する不作為となり得ると私は考えております。
そこで、自治会の衰退を前に、本市行政が今こそ起こすべき構造変革について、情報伝達、機能補完、組織基盤という3つの論点に分解し、以下質問をいたします。
第1の論点として、情報伝達の在り方の変化についてを伺います。
現在、情報の伝達手段は依然として自治会の回覧板や配付網といったアナログな地縁組織に多くを依存しております。しかし、加入率の低下により3割の未加入世帯には情報が届かないという情報格差が既に発生をしております。
本市では、民間アプリを活用した電子回覧板のモデル事業にいち早く取り組んでこられました。
そこでまず伺いますが、このモデル事業に対する市としての具体的な評価結果を詳細に示していただきたい。登録率や住民の利便性向上、役員の事務負担軽減において、どのような成果と課題があったと総括されているでしょうか。
そして、ここから行政が起こすべき変化の論点は、この知見を単なる既存の自治会会員の事務負担を減らすための道具、すなわち70%の枠内での局所的な最適化で終わらせてよいのかどうかという点でございます。
総務省の研究会の報告書でも指摘されているとおり、デジタル化の本質は地縁の有無に関わらず誰一人取り残さない情報のバリアフリー化であり、例えば災害時におけるリアルタイムな安否確認等の新たな公的価値の創出にあると考えられます。
本市は、このモデル事業の成果を各自治会の自主的な判断に丸投げするのではなく、自治会の枠組みを超えて全市民と行政とダイレクトにつながり、災害時の安否確認や平時の情報取得を可能とする本市独自の地域情報プラットフォーム、すなわち100%の市民のための地域DXへと行政主導で戦略的に昇華させるロードマップをお持ちなのか、今後の情報戦略における市長のお考えをお伺いいたします。
第2の論点として、実務負担の在り方の変化、すなわち行政協力業務の抜本的見直しについて伺います。
内閣府が実施した「コミュニティに関する市民意識調査」において、市区町村が自治会等のために取り組むべき施策として最も回答が多かったのは、行政からの依頼事項の見直し、すなわち役員等の負担軽減でありました。
本市において、各部局から自治会等に対して依頼している多岐にわたる文書配付や現況調査、各種募金の集金といったいわゆる行政協力業務について、自治会の担い手不足が限界を迎える中、これら行政協力業務の棚卸しを全庁的、組織横断的に行い、デジタル化による代替、あるいは行政による直接執行、すなわち公助による代替手段に切り替えるなど、自治会の負担を物理的に減らし、地域コミュニティの持続可能性を向上させるための具体的な業務見直しをこれまでどのようにしてきたか、また今後はどのようにするのか、市長の方針を伺います。
第3の論点として、組織基盤の在り方の変化、すなわち伝統的自治会を超えた新たな協働プラットフォームの構築について伺います。
もはや小規模な自治会単位の自助努力だけで激甚化する防災ニーズや複雑化する福祉ニーズに対応することは、組織規模のミスマッチの観点からも限界に達していると私は考えております。自治会が衰退していくのであれば、行政の側が地域を支える新たな組織の器を用意しなければならないと思います。
国の第32次地方制度調査会答申では、人口減少期における地方行政体制の在り方として、市町村は公共私の多様な主体が参画する協議会等の連携・協働のプラットフォームを積極的に構築する役割を担うことが強く提言されております。
また、総務省の調査によれば、全国で設立されている地域運営組織の約3分の2は既存の自治会や自治会連合会を母体としながらも、そこへさらに広範なNPO、企業、学校、ボランティア団体等を取り込む形で再編され、持続可能性を高めている実績もございます。
本市においても、任意加入の自治会という旧来の枠組みだけに頼り、加入率の低下をただ手をこまねいて見ているだけの地域経営からは脱却すべきです。
例えば、小学校区単位等のより持続可能な生活圏に合わせた多様な主体が対等に参画できる新たな連携・協働のプラットフォーム、すなわち地域運営組織等の構築に向けて、市制20周年となるこの節目において本市として具体的な検討、制度設計を開始するという大きな変化を起こすべきと考えますが、市長の明確なご見解と決断を伺います。
以上、本市の未来を見据えた明快かつ前向きな答弁を求め、壇上からの質問を終わります。