清水晃治
近年、毎年のように地震、水害といった甚大な自然災害が日本列島では発生しております。
北名古屋市におきましては、昭和34年の伊勢湾台風、そして平成12年の東海豪雨と未曾有の風水害に見舞われました。実際に災害を経験された市民や、その対応に奔走した職員もまだ在職しているため、その危険性は実体験として多くの方々の記憶に残っていると思われます。
一方で、地震におきましては、この地域で大きな被害をもたらした地震は明治24年に発生した濃尾地震が上げられます。
濃尾地震は、岐阜県本巣市を震央としたマグニチュード8.0、世界でも最大級の内陸直下型地震で、このときに生じた根尾谷断層は地表にあらわれたものだけでも全長80キロメートル、垂直方向のずれにおいては最大で6メートル生じております。
同じ直下型地震である阪神・淡路大震災がマグニチュード7.2、生じた断層の大きさが垂直方向で50センチメートルであることから比較しても、その規模の大きさは想像できると思います。
この地震による北名古屋市の被害状況は、1979年の飯田・愛知県防災会議地震部会の資料によりますと、市内地域により異なりはしますが、多いところで30%近くの家屋が倒壊したというデータも残っております。
しかし、この濃尾地震の発生からは128年という年月が経過しており、実際に経験された方は残っておらず、濃尾地震があったことすら知らない方が多くなっているのが現状ではないでしょうか。
私の物心ついたころには、近い将来に東海地震が起こると言われてきましたが、それからでも既に40年以上の年月が経過してしまいました。
来るぞ、来るぞと言われ続けているにもかかわらず、いまだ発生していない状況であるがゆえに、まるでオオカミ少年の物語のように、少し危機感が慢性化し薄れてしまっているのではないかと感じております。
しかし、地震に対する危機感が薄れているこの状況は非常に危険な状態です。私たちが住むこの地域では発生しておりませんが、北名古屋市が南海トラフ地震で想定されている震度6弱以上の地震は、近年各地で毎年のように発生しております。
さらに大きな震度7を記録する大地震ですら、2018年の北海道胆振東部地震、2016年熊本地震、2011年東日本大震災と近年頻繁に発生しており、決して他人事ではないのです。
また、昨年2月に政府の地震調査委員会は、南海トラフ地震が今後30年以内に発生する確率を従来70%としていたものを70から80%に引き上げており、確実に危険度は高まっていることを私たちはしっかり認識しなければならないのです。
昨年度、私たち市政クラブは2016年に発生した鳥取県中部地震で被災された鳥取県倉吉市に地震後の対応について行政視察に伺いました。
鳥取県中部地震において、倉吉市の最大震度は6弱、この最大震度は先ほども申し上げましたように南海トラフ地震の際に北名古屋市の大部分で想定されている震度と同程度となっております。
倉吉市の主な被災状況は、人的被害が重症者5名、軽傷者9名、住宅被害は全壊4棟、大規模半壊11棟、半壊235棟、一部損壊は9,190棟でした。
南海トラフ地震による北名古屋市の被害予想は、人的被害が死者若干名、負傷者280名、住宅被害が全壊450棟、半壊1,740棟です。
被災規模は恐らく北名古屋市のほうが大きくなると想定されますが、最大震度が同程度の地震を経験した自治体から実際に直面した課題を学ぶということが、これから備える北名古屋市にとって非常に有用であると私は考えるのです。
そこで、鳥取県中部地震が発生した際に倉吉市が当時直面した課題を取り上げ、現在の北名古屋市における震災対応の体制について検証させていただきたいと思います。
1.本庁舎が被災した場合の災害対策本部の代替施設について
倉吉市において、震災直後は市役所本庁舎の安全性が確認できず、市役所隣の小学校に災害対策本部を設置し、その後、県の支所庁舎に移動、そしてさらに安全性が確認された市役所本庁舎へと対策本部の移動が繰り返し行われました。その経験から、通信設備等の本部機能を備えた代替施設の整備が課題であると振り返っております。
北名古屋市においては、災害時には対策本部は西庁舎新館に設置されることになっておりますが、現在設定されている本施設の安全性と、万が一対策本部が使用できなくなった場合の代替施設についてはどのように計画されているのか、お聞かせください。
2.地域の自主防災活動について
鳥取県中部地震では、地域に残っていた方は高齢者が多く、地域での支援活動を担える若者が少ない平日の昼間に発生しました。
また、地震直後から行政においてはさまざまな業務が発生したため、避難所運営にも少人数の職員しか配置できず、きめ細やかな避難所運営ができなかった。また、自助・共助・公助の役割分担が明確になっていなかったため、円滑な災害対応ができなかったと振り返っております。
北名古屋市においては、市民の方々への防災意識の啓発、自主防災会への補助事業、そして市、防災関係機関、自主防災会等が参加する総合防災訓練などさまざまな取組を行っていただいておりますが、特に自助・共助・公助の役割分担とその具体的な行動計画を市民の方々が理解し浸透していないのが現状だと感じております。
今後、災害発生時に個人及び団体がそれぞれの役割を心得て円滑に行動できる体制を構築するためにはどのように推進していこうとお考えか、お聞かせください。
3.生活必需品や救援物資等の備蓄数及び配布方法について
地震発生直後、避難所に多くの方が避難されましたが、市からの食料等の配布が少なく避難者全員に行き届かなかった。また、被害の拡大を防ぐため、倉吉市では2万7,000枚のブルーシートを市民に配布したが、市役所1カ所で配布したため、市役所周辺には大行列ができ大変混雑したと振り返っております。
北名古屋市において、生活必需品や救援物資の備蓄数及び配布方法についてどのようにお考えか、お聞かせください。
また、ブルーシートを屋根に張る作業は素人には非常に困難な作業であり、2次災害へつながる危険性すらあります。
この作業を迅速かつ安全に実施するための体制についてはどのようにお考えか、お聞かせください。
このように倉吉市が実際に直面した課題を分析してみると、被災状況の把握と対応の指示、避難所の運営、物資の配布など、震災時対応の負担が行政に集中していることだと改めてわかります。
震災時に最も大切なことは何でしょうか。私は、誰一人漏れることなく命を救い出すことだと考えております。もちろん避難生活にも厳しい環境が強いられることはあるかもしれません。
しかし、命さえ残すことができればその人の未来はつなぐことができます。
では、誰一人漏らさないためには、どこにどのような方が住んでいるかを一番把握しているのは誰でしょうか。それはもちろん近所に住んでいる地域の方々です。では、命を救い出すのはどこで行われるのでしょうか。
それは市役所でも避難所となる小学校でもありません。倒壊した家屋など地域の現場で行われるのです。
そうだとするならば、最も訓練に使用しなければならない会場はどこでしょうか。私は、皆さんが日ごろ暮らしている地域の中を会場にすることが最も適していると考えております。
では、家屋の下敷きなどから逃れた後、次にとるべき行動を把握できている地域の方はどの程度いるのでしょうか。
家族の安否を確認するために奔走するべきか、近所の方々を助けに行くべきか、避難所へ向かうべきか。
また、それらの行動を各人がそれぞれに行った場合、正確な状況把握を円滑に行えるのでしょうか。
非常に困難であることは容易に想像ができます。
そうだとするならば、各人が地震発生から避難所に避難するまでの一連の流れを時系列でシミュレーションできる防災訓練を行うことが必要だと私は考えております。
一部の自主防災会では既に実施していただいているようですが、市民の皆さんが暮らしている地域の中を会場として、地震発生から避難所へ避難するまでの一連の流れを自治会もしくは町内会単位の全員参加で行う訓練をより充実し、市内全域に展開されることが誰一人漏れることなく命を救い出すための円滑な行動につながると私は思います。
また、地域の中で防災訓練を行い、そして地域の方々が参加することで自分たちで何ができるのだろうかという当事者意識を芽生えさせ、自主防災の意識啓発にもつながると思います。
その結果、鳥取県中部地震を経験し倉吉市も直面した行政にかかる負担集中という課題の解消にもつながり、自助・共助・公助の役割分担にもつながると私は考えますが、当局は今後の防災訓練の進め方についてどのようにお考えか、お聞かせください。
以上、市当局の見解をお伺いします。
防災環境部防災交通課長(牧野一)
災害対策本部の代替施設について、お答えいたします。
南海トラフ地震が高い確率で発生すると言われており、毎年各地で甚大な被害が発生している中、災害に対する危機感を新たにしているところでございます。
平成27年度に市役所西庁舎に災害対策本部室を常設し、最大震度6強を想定した免震構造の庁舎を増設しました。
災害対策本部室におきましては、72時間にわたり本部機能を維持するための非常用電源を確保しておりますが、この災害対策本部が使用できなくなった場合の代替施設につきましては、平成29年度に策定した北名古屋市業務継続計画に基づき、継承第1位に市役所東庁舎、第2位を文化勤労会館と定めており、市役所西庁舎が本部機能を失った場合の代替施設におきましても、常設パソコンの活用などにより必要な情報を共有することができる体制となっておりますので、ご理解賜りますようよろしくお願い申し上げます。
防災環境部防災交通課長(牧野一)
地域の自主防災活動について、お答えいたします。
市主催の水防訓練、防災訓練、また地域における自主防災訓練は休日の午前中に実施されることが多く、平日、仕事で参加できない方々にも多くご参加いただいております。
災害はいつ発生するかわかりません。議員のご指摘にございますように、平日の昼間に発生することも想定されます。
そのためにも、日ごろから個人や家族、地域で話し合うなど連携体制の必要性を感じております。
市といたしましては、今後も自治会や自主防災会、小・中学校PTAなどさまざまな団体が開催する防災訓練や防災講話に防災士の資格を持った市職員や消防署員を講師派遣し、将来的には学校、地域、行政が連携した訓練体制を整えてまいりたいと考えております。
さらに、地域の自主的な地区防災計画の策定を支援するとともに、中でも地域のきずなを深める共助の啓発に努めてまいりますので、ご理解賜りますようお願い申し上げます。
防災環境部防災交通課長(牧野一)
救援物資等の備蓄及び配布方法について、お答えいたします。
大規模地震発生後の生活必需品や救援物資等の備蓄につきましては、指定避難所である市内小・中学校に3日分の災害用備蓄食料及び日常生活に必要となる物資を備えるよう努めており、備蓄食料としてアルファ化米、クラッカー及び飲料水を備蓄しております。また、生活日用品につきましては、カセットコンロ、紙皿、紙コップ、トイレットペーパーなどを備蓄しております。
配布方法につきましては各指定避難所での配布を予定しておりますが、食料及び物資は原則として避難者全員に提供できるまでは配布いたしません。
また、個々に配布した場合の混乱を避けるため、グループ単位及び避難所以外の近隣の方への配布を予定しております。
さらに、ミルクやおむつなどの特別な配慮が必要な物資の配布は、別教室を用い適宜配布してまいりたいと考えております。
災害後にブルーシートを家屋に張る作業などの応急対策につきましては、市内の建設業で組織する北名古屋市建設業協議会と災害時における応急対策の協力に関する協定を平成19年度に締結しており、市民、市職員では困難な作業につきましては、協力を要請してまいるとともに、ブルーシートのような備蓄品につきましては、必要となる数量を早期に調達できるよう災害応援協定を締結している事業者及び市町村との連携体制を今後協議してまいりたいと考えておりますので、ご理解賜りますようお願い申し上げます。
清水晃治
必要な備蓄品や資機材、全て市単独で全部賄っていただける、ここを目指していただけるのは理想だというふうに私は思いますし、ぜひそう努めていただきたいとは思うんですが、大きな予算だったり大きな倉庫が必要になりますし、午前中の間宮議員の答弁にもありましたように、賞味期限が過ぎたものはたくさんの消費ロスとか、そういったものが出てくるということも考えられます。
何よりも、そういった完璧なものを備えていこうと思いますと、当然これからまだ時間かかります。
ただ、大地震のような災害は、今私がここで話しているようなこの瞬間に起こることだって考えられるわけですから、時間的有余はないと私は考えています。
ですから、時間的なところが私は一番困難だと思います。
先ほど答弁いただきましたように、業者だったり他の自治体さんと協定を結んでいただいていて、すぐにそういったものが集まってくる体制をこれから協議し進めていただくこと、私はそれがすごく重要なことだと思います。お互い持っているものを、全部自分が持つんじゃなくて、みんなが持っているものを例えば共有できて、必要なタイミングで必要なものがすぐに集まる体制ができるんであれば、私はその体制のほうがむしろ即効性がある対策だというふうにすごく感じます。
もう少し突っ込んで話しますと、地震が発生した直後に何がどれだけ要るのか、どのタイミングに何が幾つ要るかというのをきちんと分析すれば、最低限という表現はよくないんですけど、本当に必要なものの数が正確にわかると思います。
例えばブルーシート、倉吉市さんは人口5万人弱のところで2万7,000枚配布されたというふうに聞いていますが、じゃあその人口の単純に比例で考えると北名古屋では5万枚要るのかと。
じゃあそれを全部備蓄するのかといったら、私はこれは非現実的だと思います。
本当に要るブルーシートのタイミングって、すぐに要るものももちろんあるとは思いますが、例えば屋根にかけるものであれば、市民の方々が直接今やれないものに関しては業者の方がやる。
だとすると、まず診断士がチェックする。それから業者が入る。
じゃあそのタイミングは地震直後にできるんでしょうか、2日目にできるんでしょうか。
そこを明確にすれば、本当に必要なブルーシートのすぐに要る枚数、それから近隣から集めてくるタイミングがいつで何枚要るのかということをみんなが少しずつ協力し合う関係がこれからの防災という考えの中に、私はそちらのウエートがどんどん大きくなってくるんじゃないかなあというふうに考えておりまして、それらを踏まえまして実際の備蓄数や実際の数量だったり、そういった算出する根拠について今後どういうふうに考えていらっしゃるのか、お聞かせいただければと思うんですが、よろしくお願いします。
防災環境部防災交通課長(牧野一)
ご質問いただきました災害応援協定を結んでおります業者におきまして、災害発生後にそちらの協定先の業者の方が提供できる物資、提供いただける数量、まずそういったものを把握させていただきたいと思っております。そちらを把握することによりまして、今後の私たち北名古屋市がとるべき対策、方策が決まってくるものと思っておりますので、ご理解賜りますようよろしくお願い申し上げます。
防災環境部防災交通課長(牧野一)
防災訓練について、お答えいたします。
災害発生後の人命救助は最優先であります。
平成28年度の熊本地震におきましても、倒壊家屋からの救助は地域住民や地元消防団員が中心となり活動されたことからも、やはり地域のことは地域が一番理解していることのあらわれで、共助の神髄と言えます。
地域の自主防災の意識向上を図るため、一部の地域では地区防災計画を作成する動きが見られ、災害時に誰が何をどれだけ、どのようにするべきかを具体的に明記いただくように本市からも作成支援しているところです。
また、地区防災計画の策定によって、改めて地域におけるコミュニティーの活性化につながることも期待できますので、今後も引き続きこの地区防災計画の策定及び自主防災訓練には市職員をアドバイザーとして派遣し、災害発生直後から避難するまでをシミュレーションする訓練を取り入れるなど、自助、共助、公助の一層の理解が得られる取組に努めてまいりますので、ご理解賜りますようお願い申し上げます。