公共施設の統廃合と九之坪地区の公共施設更新について

 清水晃治

現在、財政が依然として厳しい状況にある中、過去に建設された公共施設等が大量に更新時期を迎えるものの、建てかえや改修に踏み切れないという課題に多くの地方公共団体が直面しております。

北名古屋市においても、行政系施設、市民文化系施設、子育て支援施設、保健・福祉施設、社会教育系施設、スポーツ・レクリエーション系施設、学校教育系施設、公園、そしてその他と122施設、356棟を維持管理しておりますが、そのうち約半数の施設が築40年の更新時期を迎えており、今もなお適正な改修等が行われていない状態となっております。

現在は、本市の財政状況に沿って持続可能な公共施設の維持を図れるように、個々の公共施設の更新費用、更新時期を示した北名古屋市公共施設個別施設計画を2019年度に策定を目指して進めていただいております。

平成30年第4回定例会後の全員協議会に提示された資料、公共施設の個別施設計画についてによりますと、今後40年間に必要な維持更新コストの総額は1,254億円であり、2020年度には340億円、2029年度までには490億円と短期的に莫大なコストが集中するため、現在、1級建築士を含む専門職員を配置し、施設健全度などの指標に基づき短期的に大きなコスト負担が発生しないように平準化を図っていただいております。

しかし、現在の試算においては、平準化を行ったとしても年当たりのコストが約21億円必要であり、市が目標に設定した18.8億円よりも超過しているため、総工事費のさらなる削減を行うために施設の統廃合や縮小なども視野に入れた対策が必要な状況となっております。

本市が維持管理する公共施設の中で、機能別に見た際に最も多い施設は保育園や児童館といった子育て支援施設であり、市内には33の施設が存在します。

特に児童館においては各小学校区ごとに1つ配置されており、近隣の自治体と比較しても人口当たりの児童館数は多く、維持管理費用に大きな負担がかかっております。

しかし、市の面積を児童館数で割った1児童館当たりのカバーするエリアは平均1.84キロ平方メートルで、約半径800メートルの圏内に立地しているため、利用する子供たちやベビーカーを押した女性の方でもおおむね徒歩で来館が可能な距離となっております。

そのため、児童館は市民にとって大変利用しやすい施設となっており、小・中学生の子供たちが放課後に集える居場所としての役割を担うだけでなく、就学前の乳幼児やその保護者の方々のコミュニティーの場としても重要な役割を担っていると私は考えております。

また、児童館は子供たちやその保護者のコミュニティーづくりを行う場所としてだけでなく、地域ふれあい会議を主催し、自治会、老人会、民生委員、小・中学校、各種ボランティアなどそれぞれの地域にかかわるさまざまな団体をつなぐハブの役割も担っており、餅つき大会やしめ縄づくりなどの文化行事を通して地域コミュニティーの醸成になくてはならない存在になっております。

一方で、児童館が主に子供たちが利用する施設であるのに対して、もえの丘やさかえ荘といった主に高齢者の方々が利用する福祉施設においても、市内には多数建設されたおり、それらの施設では高齢者に対する教養の向上、趣味活動、能力活用を通して高齢者の方々のコミュニティーづくりを行う場として大変重要な施設となっております。

しかし、このように児童館や高齢者向け福祉施設はどちらもコミュニティーづくりを行う場として同じ目的を有するにもかかわらず、その対象者が異なるため別々の施設として建設され、その結果、市は多くの施設を持たなければならない状況となってしまいました。

また、子育て支援を行うファミリー・サポート・センターの有償ボランティアとシルバー人材センターが行うワンコインサービスとでは、サービスを受ける側(利用者)の対象年齢が異なるものの、どちらも利用者の日常生活における手助けを行うことでその報酬として少額の謝礼をサービス提供者(支援者)が受け取るサービスという意味では同様のサービスであります。

しかし、現在は子供用、高齢者用とそれぞれ異なるサービスと区別されているため、登録している支援者の数が少なくなったり、また年齢構成に偏りが生じるといった要因にもなっております。

さらに、子育てや高齢者に関したボランティア団体の方々と話を聞いていますと、どの団体も新規会員を集めることに大変苦労しており、メンバー自身が高齢化してしまうといった課題もよく耳にいたします。

そこで、児童館や高齢者向け福祉施設を今後それぞれ別々に改修、建てかえを行うのではなく、2つの施設を統合した複合施設を新設することで公共施設等適正管理推進事業債を利用することができ、総工事費のうち本市の一般会計が負担する費用を圧縮できるだけでなく、さまざまな年齢の方が施設を利用することができますので、その施設でお互いに顔を合わせ、声を聞き、触れ合うことで高齢者の方には笑顔がふえ、脳の活性化にもつながるといった効果をもたらし、子供たちにはマナーが身につく、高齢者をいたわる気持ちが芽生えるといった効果にもつながります。また、複合施設周辺における地域全体のコミュニティーをより一層醸成するきっかけにもなると考えられます。

さらには、子育てや高齢者向けに各種サービスを提供する支援者の方々がこの複合施設内で活動する機会がふえれば、より一層お互いのグループ活動の理解が深まり、相互で協力し合える体制づくりにもつながるなど多くの相乗効果も期待できます。

実際、既に大府市などでは児童老人福祉センターが設置されており、子供たちと高齢者との世代間交流が図られ、児童は尊敬やいたわる気持ちの育成、高齢者は生きがいを持つことに役立っているそうです。

次に、災害時の指定避難所としては、現在、市内小学校の体育館が設定されております。

毎年、台風による暴風雨警報などが発令し、避難所は何回も開設されておりますが、その避難者数は昨年実績で見ると1カ所の避難所当たり平均7.5人で、最大人数でも40人と聞いております。

この避難所となる体育館は、地震や洪水などの大規模災害にたくさんの避難者が発生した際にも受け入れられることを前提としているため、非常に大きな収容空間を有し、大規模災害に至らない通常の避難においてはその空間に対して利用されるスペースはごく一部にとどまり、空調をスポットクーラーやストーブで対応しても残った空間に冷気や暖気は拡散してしまい、また床面はかたく冷たいフローリングであるため決して快適な環境とは言えない状況になっております。

また、避難者が少人数である場合、体育館内の会議室を使用するなど対応を行っていただいてはおりますが、一部の避難所となる体育館の会議室ではいまだ空調は整備されておりませんし、そもそも椅子を使用することを前提とした部屋であるため、かたく冷たい床面になっており、床面で横になるには高齢者や障害者の方にとっては決して快適な環境であるとは言えません。

また、避難所によってはトイレが屋外にしかないため、夜間トイレに向かう際には周囲が暗く足元が見えない、トイレの扉が強風にあおられ開閉する際に危険を感じたとおっしゃる避難者の方も見えました。

そこで、さきに述べた子供・高齢者用複合施設に避難所機能を付加し、指定避難所として使用するとよいのではと私は考えております。

平常時は複合施設として使用し、災害が発生した際には施設内のスペースを全て開放し避難所として機能させます。毎年発生する大災害には至らない避難所としては、避難者を十分収容可能なスペースは確保できますし、ふだんから地域のあらゆる方々が利用しなれ親しんでいる施設であれば、いざ災害が起こった際にも避難所への誘導も円滑に行うことができます。

また、災害時に弱者となり得る子供や高齢者などにも配慮した設備もあらかじめ備わっているため、より安全で快適な環境を避難者の方々に提供することができます。

さらに、大地震などで被害の規模が大きく避難所生活が長期化した場合、避難所が終息期に向かい始めたら、小学校の体育館に残った避難者はこの複合施設に順次集約していくことで早期に小学校の体育館を開放し、子供たちの教育活動を再開させることができます。

続いて、平成30年第4回定例会後の全員協議会に提示された資料、第3期北名古屋市食育推進計画(案)についてによりますと、食育計画の推進に向けての本市の重点目標には、食育講座や男性料理教室など調理実習で食を通した仲間づくりや、共食をする楽しさを実感できる機会を設ける、市内で共食ができる場所をまとめて市民に周知する、市内で高齢者が共食できる場を提供し周知するなど、市民が食事を通して学び、そしてコミュニケーションを図れる機会を提供していく計画になっておりますが、市民がともに食事をつくり、そして食事をとれる調理設備を整えた文化施設は、文化勤労会館、健康ドーム、そしてもえの丘などと施設数は限られているため、交通弱者である子供や高齢者にとっては足を運びづらく、市内において利用できる方々の地域に偏りが生じやすくなるといった課題が想定されます。

そこで、さきに述べた子供・高齢者が利用できる避難所機能を有した複合施設に調理設備を備えた文化施設機能を付加することで、市内どの地域に住んでいる方でも足を容易に運ぶことができ、そして全ての市民に対して食育実践の機会を均等に提供できる施設として利用できます。

また現在、市内には子ども食堂や地域食堂として8つの食堂が活動を行っておりますが、このような活動を行っている団体に対して、より充実した調理設備や場所を提供できるだけでなく、地域の人たちがふだんなれ親しんだ施設で食堂を開催できるため、より多くの人たちが食堂に参加し活動そのものがさらに活発になっていくと考えられます。

昨今、女性活躍の推進という言葉はさまざまな場面で耳にしますが、厚生労働省が発表した平成26年就業実態の多様化に関する総合実態調査の概況によりますと、正社員以外の労働者(出向社員を除く)の現在の就業形態を選んだ理由別労働者割合のうち、家庭の事情(家事、育児、介護等)と両立しやすいからを選んだのは、男性が5.6%に対して女性は35.9%と男女間で大きな乖離が生じております。

この結果からも、今もなお家事や育児は女性への負担が大きく、女性の社会進出にとって足かせとなっていることが読み取れます。また、家事や育児が理由でフルタイム労働である正職員の職につけず、その結果貧困が生まれてしまっているのなら、真に女性が活躍できる環境づくりのためにも、家事や育児のさらなるサポートは必要不可欠であると私は強く感じております。

そこで、調理設備を備えた公共施設がより一層市内に拡充し、子ども食堂や地域食堂を主催する団体に提供することができるのであれば、主催団体における負担は今より減らすことができ、その結果、食堂からサービスを受けられる人の数をふやすことができ、また開催回数も今よりもふやすことにつながるのではないでしょうか。

開催回数においては、現在主流である月1回から毎日開催に近づけることができれば、今まで女性が正社員を選ぶことができなかった要因でもある夕飯の買い物や調理といった家事を行う時間から開放する一助となり、女性活躍の推進をさらに後押しすることにもつながると考えられます。

さらに、複合施設を災害時の避難所として利用した際は、避難生活が長期化した場合でも非常食ばかりに頼らなくても複合施設内の調理設備を利用して避難者自身が自炊することができ、避難者の健康維持や自立支援にもつなげることができます。

以上のように、北名古屋市公共施設個別施設計画を策定し、今後40年、50年の施設のあり方を考えなければならない今だからこそ、従来のような特定の対象者であったり単一の目的といった施設のまま改修、建てかえ及び統廃合をするのではなく、いわゆる縦割り行政の壁を撤廃し、総合的な見地から最大の効果を生み出せる複合施設の検討が必要であり、これこそが公共施設の更新費用を抜本的に圧縮させる策にもつながるのではないでしょうか。

そこで、1つ目の質問です。

既存施設の統廃合や縮小などにより総工事費の削減を図っていくと全員協議会の資料では述べておりますが、どのような統廃合を計画しているのかお考えをお聞かせください。

続きまして、このような複合施設が現在、市内においてどこのエリアが最も必要であるかと考えた場合、私はまず第1に人命に直接かかわる水害や地震の被害が高いと想定されるエリアが優先されるべきだと考えております。

また、女性活躍の場をより広域に広げることができ、また高い効果が見込める地区としては、都心部への通勤が便利な西春駅や徳重・名古屋芸大駅近郊のエリアがより好ましいと考えております。

さらに、高齢者にとって憩いの場である福祉施設が、現在、東側の師勝地区にはさかえ荘、さくら荘、ふたば荘、そしてもえの丘と4カ所設置されているの対して、西側の旧西春地区には憩いの家とくしげがあるのみで、福祉施設は東側に偏重しており、旧西春地区の方々からも高齢者が利用できる福祉施設をぜひ拡充してほしいと切望する声をよく耳にいたします。

これらの条件を総合して考えますと、九之坪地区の鴨田小学校区が最も優先度の高いエリアであると私は考えております。

特に、児童発達支援事業所ひまわり園とひまわり西園が統合され新園舎として整備されている予定の九之坪保育園分園跡地、もしくはその周辺地域は鴨田小学校区のほぼ中央に位置し、小学校ともほぼ隣接した立地であるため学区内のどこからも同様に足を運びやすく、子供たちが学校から移動する際にもより高い安全性を確保することができます。

また、大規模災害の際には、避難所が開設される複合施設と鴨田小学校の体育館の双方において連携も容易に行うことができるため、複合施設の建設に最も適した場所であると私は考えております。
ここで2つ目の質問です。

今後、既存の公共施設を更新していくに当たり、市民の方々の人命を最優先とし、より公平で質の高いサービスを提供していくには、九之坪地区から着手していくことがより望ましいと私は考えておりますが、行政はどのような進め方をお考えか、お聞かせください。

 

 副市長(日置英治)

公共施設の統廃合について、お答えをいたします。

さきの全員協議会では、インフラの老朽化が急速に進展する中、全ての公共施設を適正に維持していくためには莫大な更新コストが必要になることをご説明させていただきました。

現在、本市では平成30年度、平成31年度の2カ年で学校施設とそれ以外の公共施設について、公共施設個別施設計画の策定作業を進めているところでございます。

平成31年度には、平成27年度に策定した北名古屋市公共施設等総合管理計画に基づき、市民ニーズの変化などに対応し施設の複合化や統廃合、用途変更などを行い、身の丈に合った施設規模と施設総量の適正化、スリム化に努め、トータルコストの縮減につながる公共施設個別施設計画の策定に取り組んでまいります。

こうしたことから、ご質問にございます公共施設の複合化はコスト削減に非常に有効であると考えており、今後は議会の皆様方のご意見をお聞きしながら、施設の所管部署と調整を図り、総合的に取り組むことで総工事費の削減に努めてまいりますので、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

 

 清水晃治

例えば、民間企業では大きなプロジェクトなどを行う場合はさまざまな部署からいろんな人が集められて、それぞれ専門家が多面的に議論、分析を重ねることで最適な仕様、スペック、設計を行っていくわけですが、同じ場で顔を突き合わせることで誰かが発した意見に新たな気づきがあり、そしてそれに乗っかる形でどんどん新しいアイデアも生まれ、それが結果的に1足す1が3にも4にも膨らんでいく、いわゆるブレーンストーミングと言われるものですけれど、ただいま施設の所管部署と調整を図ってとご答弁いただきましたが、ここで述べられました所管部署と調整を図るというのは、いわゆる縦割り行政と言われるような各部門で検討したものをただ集めるというものではなく、先ほど民間のプロジェクトを例にさせてもらいましたけれど、施設管理課がプロジェクトリーダーとなり、さまざまな部署が顔を突き合わせて議論を繰り返す中で今後の公共施設のあり方を総合的に検討していくという意味で捉えてよろしいのでしょうか。

 

 副市長(日置英治)

まさにそのとおりでございまして、私が考えておるのはファシリティーマネジメントの担当部署がリーダーシップをとって、それぞれの施設管理者と1対1でやると、なかなかこれが交渉が難しいわけでございます。

ただいま清水議員が申されたとおりでございます。職員はいろんな部署を経験しております。

得手不得手も当然のごとくございますので、多くの職員をプロジェクトチームみたいな形で呼び寄せて、その中でいろんな意見をいただいて最終的に取りまとめていくと、こういった形を私はイメージしておりますので、まさに議員のお考えと同一かなあというふうに理解しておりますのでよろしくお願いいたします。

 

 副市長(日置英治)

九之坪地区の公共施設更新について、お答えをいたします。

本市では、国のインフラ長寿命化基本計画に基づき、建物を新しくつくるから既存のものを賢く使うという考え方のもと、本市の公共施設等総合管理計画の基本的な方針に従い、九之坪地区の公共施設について、統廃合、有効利用を進めているところでございます。ご質問の九之坪保育園分園の跡地には、ひまわり園とひまわり西園を統合した児童発達支援事業所を計画しております。

この施設は、静かな環境での療育を必要とすることから、複合施設としての整備は困難であると考えているところでございます。

しかしながら、私も市民の方々の人命を最優先にと考えておりますので、九之坪地区も含めた他の公共施設の更新の場合には、大規模災害に備えた避難所としての活用ができるよう検討してまいりたいと考えておりますので、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

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