今後の財政運営での資産形成の在り方と人事評価と職員の意識改革について

井上 一男 井上一男

平成30年第3回定例会で決算認定されたような官庁会計は、現金収入である歳入を現金支出である歳出に割り当て、歳入は歳出として使い切ることが重視され、予算をその年度内にきちんと使ったかを報告するのが目的であり、単式簿記、現金主義、単年度主義と言われております。

一方、民間企業の企業会計は、利益を上げその利益を株主に配分するため、事業期間における企業の損益状況と財産状態を把握し、株主や債権者に報告する複式簿記、発生主義、継続企業の原則となっております。

自治体では自治体公会計として、統一的な基準による一般会計、特別会計、公営企業会計の財務諸表4表(資金収支計算書、貸借対照表、純資産変動計算書、行政コスト計算書)が平成29年度分より作成されることになりました。

この財務諸表4表は相互に関連しながら、資産、債務の状況や行政コストに関する情報を提供することにより、純資産の増減理由、その大きな要素である財政行政コストの内訳、現金預金の増減を性質別に分解することにより、人口減少が進展する中、限られた財源を賢く使うことにつなげることができます。

そこで、本市が将来負担と考える懸念材料の費用はどのぐらいあるのでしょうか。

本市の学校施設16校の多くが昭和40年代に建設されているため、長寿命化に伴う校舎の改修、あるいは現在策定中の公共施設個別施設計画に基づく本市105施設の改修など、多額の建設費用が必要となることに加え、尾張土地開発公社における新たな用地の取得など多く増加要因が散見されます。

また、その懸念材料を含めた将来負担比率と負債と資産の割合はどのような数値になるのでしょうか。

平成29年度の健全化判断基準の一つであります将来負担比率は12.4%と良好な比率でした。

近隣市町、例えば津島市32.2%、江南市29.1%、犬山市9.5%、あま市4.5%と5団体の平均値は17.5%となり、本市の将来負担比率は平均を下回る水準になっております。

また、平成28年度の財務諸表4表の一つであります全体貸借対照表により、負債と純資産の割合は1対1.35でした。

しかし、近隣市町と比較してみると見劣りがあります。

例えば、清須市1対2.24、あま市1対2.07、尾張旭市1対4.13、津島市1対1.37と将来世代への負担を鑑みると本市の割合は決して良好とは申し得ません。

少子・高齢化社会、低成長経済、そして税収が伸び悩む中、高まる市民ニーズに対して自治体が市民サービスを持続して提供するにはしっかりとしたコスト意識を持たなければなりません。

1円でも効果的に、よりよいサービスにつなげる意識が重要となります。将来世代の負担割合が高くなる状況下、財政力との兼ね合いにより今後は資産形成を見詰め直す必要があると思います。

そのためには、施設ごとに現状及び将来における課題を整理し、財務諸表4表を活用することにより、今後の施設の必要性や適正配置のあり方などに費用対効果分析など評価制度の創設も必要ではないでしょうか。

例えば、施設白書の作成とか、市民ニーズに合致した施設の機能や適正配置等について検討し、121施設の現状把握と将来展望を施設別のバランスシート、行政コスト計算書、施設群による比較を行う資料作成の検討などもどうですか。

また、国や県などからの歳入金額も次第に減少する中、場合によっては施設の統廃合や民営化、NPOによる管理も含むなど、検討する際の資料作成に財務書類4表を活用され、必要な資産を選択と集中の方法により財政健全化に反映させることもどうでしょうか。

そこで質問ですが、懸念材料の費用や将来負担比率と負債と純資産の割合を踏まえ、今後の財政運営での資産形成のあり方についてどのように考えているのか、お尋ねします。

次に、インフラ整備も大事ですが、情報の力で助けられる人命があります。行政の横断的な連携でプロジェクトチームを立ち上げ、公共施設のあり方を地域の住民とともに検討するなど、まさしく自分たちで地域をつくり上げる意識改革が必要と考えます。

そこで次の質問ですが、これら行政の課題に対して対応されている本市の職員の人事評価と人材育成に当たり、職員の意識改革がどのように反映されているのかについてです。

広報「北名古屋」10月号の人事行政の運営状況のお知らせの中に、職員の人事評価の状況として目的と対象者が記載してあります。

目的は、職員の能力、実績をより重視した人事管理を行い、処遇等に反映させ組織の活性化と職員の士気の向上を図る。

対象者は全職員(休職、育児休業等の職員を除く)とあります。

私の考える職員の意識改革は、組織の活性の原動力になり得る元気な職員を育てることと、現場主義を取り入れることから始まると思います。

今求められているのは、出る杭をたくさん持つ元気な職員です。

出ない杭は土の中で腐るという考えもあります。

つまり、この杭は仕事に限らず地域活動でも趣味でも何でも構わないと思います。

チャレンジより保身に走りがちな自治体職員は、インセンティブがないというイメージがあります。

年功序列の給料体系と昇給昇進などの人事考課も、減点主義であれば個人のモチベーションの低下、そして組織力の低下という弊害をもたらします。

個人のモチベーションを高めるためには、個人の目標、生きがいと組織の目標、やりがいを同期させ、個人の成長が組織の成長につながらなくてはなりません。

短期的な成果ではなく、中長期的に見られる人事評価制度と人材育成の仕組みが必要となります。

人事評価結果を予算や施策あるいは組織、人事考課、勤務評定に反映してこそ本当の成果主義と言えます。

そして、データ分析だけではなく現場の経験も大切だと思います。やる気の原動力は、市民の笑顔を見ることから湧き上がるのです。

課題を解決する知恵も現場にあります。

縦割り組織にとらわれず、政策目標に基づき効果的かつ効率的に事務事業を処理できる横断的な組織づくりです。すなわち現場主義を取り入れることで、個々の職員の責任と権限が明確となり、意思形成過程が簡素化されたフラットな組織編成が有効となります。

組織編成は柔軟に見直され、市民から見てわかりやすい構造、職名を取り入れる。

このように、行政ニーズへの迅速かつ的確な対応を可能とする組織づくりが人事評価と人材育成での職員の意識改革とマッチングすることにより、インセンティブが機能し個人のモチベーションが高まると思います。

そして、元気な職員が育ち改革の原動力となると思います。

相手を思いやる心を持った元気な職員の対応を間近に見た市民に安心感が広がり、自分も頑張ろうという生きがいも湧くのではないでしょうか。

高齢者人口がピークを迎え、団塊世代のジュニアが65歳になる2040年ごろを見据えた地方行政の姿を探る議論が始まっています。今後の市民生活に密着した課題として、防災、認知症対策、外国人労働者とのつき合い等が特に若手職員に求められ、意識改革の柱として、1.コスト意識の醸成、2.明確な目標設定、3.AI(人工知能)を使いこなす、4.価値ある仕事を創出する等を見据えて行動し結果を残す必要があります。市民との触れ合いの中で自分の目で確かめ、自分で分析し自分で行動する、いわゆる現場対応が求められていくと思います。

そこで、人事評価と職員の意識改革についてどのように考えているか、お尋ねします。

民間企業等の経営に活用されているマネジメントサイクル、PDCAを行政経営にも取り入れ活用することも大切です。

Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字で、これを繰り返す継続的な活動のことです。PDCAサイクル(計画、実行、評価、改善)を組織もキャリアも同様に回すことで自分の目標や生活習慣を改善したり達成したりすることに役立てることができます。

自治体のマネジメントはPDPD(計画、実行、計画、実行)の繰り返しであり、PDCAサイクル(計画、実行、評価、改善)が不十分な事業もあります。

このことを会計に置きかえれば、官庁会計はPDPDの繰り返しであり、そして自治体公会計はPDCAサイクルそのものだと思います。

財務諸表4表の公表が始まる今、大いに公会計を活用し、限られた予算、職員、公共施設、情報等の資源を適正配分することにより、公共の福祉と経済性の実現の均衡が保っていけると思います。

この財務諸表4表からわかる資産、負債あるいは行政コストの結果を正確に把握し、分析を行った上で、今後どのような方向にしたいのかを判断する材料となります。

この結果を公表し、市民と共有することでさまざまな意見やアイデアを集約し、新たな施策の提案、実現につなげていくことだと思います。

そのためにも、職員一人一人の自治体公会計に対する意識改革と知識の醸成が必要となります。

お互いが助け合うという共同体意識があるまちを、10年後、20年度を見据えながら市民と職員とが笑顔と安心でつくり上げていく、このように元気な北名古屋市にしたいと願いつつ、私の個人質問といたします。

 

 財務部次長兼財政課長(大林栄二)

今後の財政運営での資産形成のあり方について、お答えいたします。

本市における財務書類4表の作成につきましては、国の要請を受け平成28年度決算からこれまでの総務省方式改定モデルにかえて、統一的な基準による財務書類の作成をしております。

また、この統一的な基準による財務書類の作成には、固定資産台帳の整備が前提となることから、固定資産台帳についてもあわせて整備いたしました。これにより公共施設等のマネジメントや自治体間の比較が可能となり、これらを積極的に活用していくことが求められています。

その上で、本市が将来負担と考えている懸念材料は、老朽化した公共施設の維持更新、道路を初めとするインフラ資産の更新、防災広場の整備、清須市、豊山町の2市1町で進めております特別養護老人ホームの建設、障害者グループホーム等の整備に対する補助や、ごみ処理施設の余熱を利用した温水プールの整備に係る組合地方債などでございます。

中でも多額の事業費を伴うものとして、学校を含め121施設ある公共施設及びインフラ資産の更新費用でございます。

これらの更新に係る費用は、今後40年間で公共施設でおよそ850億円、インフラ資産でおよそ550億円、合わせて1,400億円と試算しております。

仮にその額を40年間で平準化し、事業に係る費用のうち7割を地方債の発行で賄うと仮定して試算してみますと、ピークとなります平成51年度の将来負担率は171%、負債と純資産の割合は1対3.07となります。

また、自治体において現世代と将来世代の負担割合をあらわす指標として貸借対照表を活用して、資産に占める純資産の割合から現世代と将来世代の負担割合を示す純資産比率があり、平成28年度決算における本市の数値は56.8%となっており、おおむね良好な数値であると考えております。

これに懸念材料の費用を加え試算いたしますと、今後40年間のピーク時で純資産比率は83.4%となり、現世代の負担が高く、将来世代の負担が軽減される結果となります。これは地方債が原則建設事業の財源を調達する場合しか発行が認められていないことに加え、償還期限が耐用年数を超えないようにしなければならないことから、施設等を整備すればするほど純資産の比率が高くなってしまうためでございます。

しかし、地方債を発行することによって公債費の増額を招くほか、地方債によらない費用は国庫・県費を除いて一般財源から支出しなければならず、行政コストを削減するためにさまざまな事業ができなくなる可能性があります。

今後の財政運営における資産形成のあり方につきましては、議員がおっしゃるように、耐用年数や取得価格などが記載された固定資産台帳を活用した施設ごとの貸借対照表や行政コスト計算書を作成し、施設の実態などを的確に把握することは大変有効な方法と思われますので、現在策定を進めております公共施設個別施設計画にそのような考え方も取り入れながら、施設の適切な更新、統廃合、長寿命化にもつなげてまいりたいと考えております。

公共施設個別施設計画策定後は計画に基づいて整備を進めてまいりますが、厳しい財政の中、人口減少、少子・高齢化などこれまでに経験のない社会環境の大きな変化に対応するためには、計画期間内に一定の期間で定めたPDCAサイクルの期間ごとに設定した数値目標に照らした取組を評価、改定しながら計画の進捗管理をし、将来も安心して暮らせる地域を構築してまいりたいと考えておりますので、ご理解賜りますようお願い申し上げます。

 

井上 一男 井上一男

将来負担と考えている懸念材料は多々ある中で、地方債で賄えない場合は一般財源で支出しながらピーク時の負債、純資産の割合は1対3.07、そして純資産比率83.4%ということであり、そこで平成28年度の全体貸借対照表から負債合計と純資産合計を見ますと、負債合計は330億円、純資産合計は446億円となっていますが、回答されたピーク時の平成51年度、2039年度の負債・純資産の割合は1対3.07ですが、負債額と純資産額を教えてください。

 

 財務部次長兼財政課長(大林栄二)

ピーク時であります平成51年度の負債額と純資産額につきましては、負債額が359億円、純資産額は1,104億円と試算しております。

 

井上 一男 井上一男

平成51年度の負債額は、今ご答弁のように負債額359億円は平成28年度の負債額と比較して29億円の増加に対し、純資産は何と2.5倍の1,104億円となる予想値であります。

ピーク時の平成51年度の将来像を見る場合、公共の福祉と経済性の実現のバランスという行政経営のあるべき姿を実現するためにも、将来負担を考え、また住民サービスにも配慮した今後の財政運営に対し、固定資産台帳と施設ごとに公会計処理を活用し本市の資源、予算、人、物、情報を最大限に適用配分しながら公共施設の個別施設計画に取り入れるとのこと、私も大いに賛同するところであります。

私からの提言でありますけれども、負債、純資産の割合は1対2、純資産比率は66.6%を目標とされたらと思いますが、この目標値はどうでしょうか。

 

 財務部次長兼財政課長(大林栄二)

負債と純資産の割合を1対2とのご提言ですけれども、この割合につきましては統一的な基準による財務書類の作成が始まって日が浅いということもございますので、今後研究が必要であるというふうに考えております。

議員がおっしゃいますように、純資産の比率が極端に傾くというのは好ましい状況ではないというふうに考えております。

といいますのも、財政規模に見合わない公共施設の保有というのは、将来、資産を維持していくだけでなく、それに改修に係る費用が莫大になるということがございます。

資産を維持するためにということになりますと、資産を維持することが目的化してしまいますので、本来の目的といいますのは公共施設を市民につなげるということでございますので、それらの財源の確保が難しくなってしまいますし、他の市民サービスにも影響が出るということもございます。

このようなことから、一般財源の確保に努めるとともに、負債と純資産の割合を視野に入れながら、施設の統廃合を含めた適正な公共施設の管理に努めてまいりたいと考えております。

 

 総務部人事秘書課長(徳力桂子)

人事評価と職員の意識改革について、お答えいたします。

人事評価は、平成28年度より地方公務員法の改正により、国にあわせる形で実施しております。

本市では、それ以前の平成23年度より目標管理制度を先行導入するなど、人事評価における能力評価と業績評価を念頭に置きながら、毎年見直しを行いながら進めてまいりました。

その目的は、職員一人一人が組織目標に照らした個人目標の達成に向けて、PDCAを繰り返すことにより市政全体の成果に寄与しようとするものです。

また、職員みずから目標設定することは、自分の仕事の目的をしっかりと考えることを前提とするため、自律した力が磨かれることにつながると考えます。

当初と中間と期末に上司との面談によるコミュニケーションが図られることもあり、人事評価は人材育成のためのツールの一つとして重要なものと位置づけています。

職員の意識改革について申し上げますと、市民ニーズや時代の変化を敏感に受けとめ市政に反映させる視点を養うことや、仕事に対する誇りを意識させることは、いつの時代であってもとても重要であると考えております。

そうした中で、人口減少による2040年を見据えた自治体のあり方についてもお話がありましたが、人口が減少に転じる今、未来を見据えて何をすべきかを考えることはとても大切です。

これから必要とされる意識改革は、まさにそこにフォーカスすべきであり、その意識の進化を評価すべきであると考えております。

現場という言葉もいただきました。現場を知るということは、改革・改善を推進していく力とも言えるものでございます。

例えば、今年度は都市整備課と市民活動推進課との協力という形で、徳重・名古屋芸大駅周辺まちづくりワークショップを開催しました。

これは市民と職員がともに駅周辺という現場の未来について、課題やニーズを整理しながらまちづくりにつなげていこうとするもので、「エキミラ」と名づけられ活発に意見交換がされました。

また、職員の業務外活動におきましては、職員有志による自主研究グループが、他市町職員との合同勉強会で共通の行政課題や将来展望について見識を深め、気づきを得る取組が行われております。

そのほか、市の補助事業の田んぼアートや完全な自主事業で実施している子供の職業体験イベント「きっずタウン」では、市民、議員、市内企業、NPO、大学生などの市民に職員有志も加わり実行委員会を組織し、夢、希望、笑顔、郷土愛、チャレンジ、自己肯定感、自己有用感を理念に、主体的にまちづくりに取り組んでいます。

このような現場での活動に対する評価についても視点に加える必要があり、人事評価の形骸化を避けながら、引き続き育成に主眼を置いた人事評価の運用を進めてまいりますので、ご理解賜りますようお願い申し上げます。

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