行政サービスの特性と民間活力の活用について

 沢田 哲

行政サービスの特性と民間活力の活用についてをテーマとして、個人質問させていただきます。

行政改革の推進に関する法律が施行されて12年が経過し、民間活力の活用が進んでいる地域とそうでない地域とでは公共サービスの利便性に差が出始めていると思っております。

特に福祉の面では、制度の設計、法の整備により時間を要し、今まさに困っている人を行政が支援できるようになるまでに相当の時間を要するのが現状であります。

行政としては、柔軟に素早く動くことが可能なNPOなどを活用することでこうした課題に対応できる可能性もありますが、実際には行政がそれらの民間活力を活用し切れていないのが現状に見えます。

もちろんNPOなども、行政が法律だけでなく平等性、公開性、そして予算というものから縛りを受け、どうしても動きが遅くなるということについてよく理解されていない場合も多く、そしてそのために相互のコミュニケーションを悪くしているという現状もあるように見受けられます。

そうした中、平成30年1月19日、北名古屋市主催の北名古屋市の未来を語る講演会「自治を回復し、まち・むらの課題を、まち・むらの力で解決するために~協働と総働の基礎を再認識する~」というテーマで講演会が行われました。

これは講演会の概要ですが、北名古屋市の人口はこれまで増加してきていますが、そのうち85歳以上の人口は2015年までの10年間で約1.7倍にふえ、その後10年で約3.5倍になり、20年間では約5.4倍になることが予測されています。
これは2005年には85歳以上の1人を52人の15歳から64歳の生産年齢人口で支えていたものが、2035年には9人で1人を支えることが予測されます。

2020年には65歳以上が市全体の約25%になり4人に1人、75歳以上が8人に1人と予測されますが、高齢化は人間だけの問題ではありません。

市の公共施設等総合管理計画では、老朽化した建物や橋、下水道等の更新費用が毎年約5億円不足すると試算されております。

85歳以上になると要介護の人の割合が増加します。仮に、要介護3の人にかかる費用が1人1日1万円として、市の負担が15%とすると、2025年には要介護3以上の人が約350人増加するため1年間で約2億円の税金が必要となり、これらをどう賄うのか。

そして税収を2億円ふやすには、単純に計算して所得を約20億円ふやさなければならず、非現実的であります。これはつまり健康な人をふやすことは税収をふやすのと同じ効果があると思います。

2015年までの10年間で市の歳出規模は25%増加したが、職員数を1割減らし、給与を全体で15%削減しましたが、計算上では、かつて3人でやっていた仕事を今は2人でやっていることになります。

住民はサービスを受けるだけのお客様ではなく、税金を払う投資家や株主であり、市の経営状態を知らなければならないと思っております。

北名古屋市はコンパクトなまちですが、多様性に富んでおり、子供が多い地域やお年寄りが多い地域があって、直面する課題が異なっていて、全市一律ではなく似たような特性を持つ地域が集まってお互いに学び合う地域づくりが必要となるでしょう。

また、高齢化が進んでくると、今の北名古屋市のような市民団体が行政の仕事を担い、行政がその支援をする一対一の契約のような協働の制度には限界が見えてきます。

講演会の中では総働という言葉で表現されていましたが、これからは現行の市民協働による地域づくりをさらに進化させ、地域を担うさまざまな主体(自治会、学校、NPO、専門家、行政、事業者、金融機関など)が総力を挙げてつながり、今後、行政だけでは対応できない課題に対し市民、地域、企業、NPOなどが連合体(地域自治組織)をつくってまちづくりをしていく総働の時代であるとの講話を拝聴いたしました。

私は今後どのように取り組んでいくのかを考える機会となり、まさに将来を見据えて多様な立場の人や組織のかかわり方について考え、具体的な一歩を踏み出さなくてはならないのは今なのだと感じました。

そこで、以下3点について質問いたします。

1.NPOなどと行政機関の連携による公共サービスの実施について。

市民や地域に対し、市民協働意識の醸成は地域力を高め、地域のつながりを促す取り組みについては短期的な効果があらわれにくいため、地道で継続的な忍耐強い取り組みが必要となるところであり、引き続き強力な支援が必要と思います。

その中で、市民活動推進課が主管する事業では、毎年、市民協働推進事業補助金が採択され、数多くの補助事業が実施されております。

本市は市民協働推進事業補助という位置づけで、ホップ・ステップ・ジャンプの3段階で市民活動団体に補助をし、市民協働を実践すべく団体の支援を行っております。

本来の補助目的は、市民の活動を公共的な立場にまで発展させるところにあるのだと思います。

しかし、ジャンプ部門が終了した後、行政との連携がうまくいかず市民による公共サービスという目的が実現できていない、それが行政側の課題であると思います。

一方で、NPOなどの市民団体側にも課題があると思います。

根本的な課題は、公共サービスは利益追求しにくく、資金力が高まらないということです。

行政側としても、いつまでも補助金を出し続けるわけにはいかないことは理解できます。

補助金はあくまで補助金であり、団体側の資金力を高めることにはつながりません。

北名古屋市には高齢者や子供に関する課題、市民の健康づくりなど、さまざまな課題に工夫を凝らして熱心に取り組んでおられるNPOなどが幾つもあると理解しております。

その一方で、そうしたNPOなどによる完成度の高い公共サービスと行政の各部署との連携がうまくいかず、力を出し切れていない現状があるのも事実であります。

NPOなどへの支援は、活動費を補助するだけにとどまってはならないと思います。

市の行政機関を上手に連携させて、行政の手の届かない領域に公共サービスを行き渡らせることを目指すのが本来の取り組み目的であり、市民活動推進課として行う支援であると思っています。

これらについてどのように考え、今後、取り組みをされるのかの答弁を求めます。

2.民間活力の活用に対する職員理解と活用方針について。

現行の市民協働による地域づくりをさらに進化させ、さらに市民協働による取り組みを進めると同時に総働の取り組みへと進化させるためには、単にイベント、行事を実施するだけではなく、今後必要となる課題解決のための事業として成り立たせる必要があり、市民団体が行政と一緒に取り組んでいかなければならず、そのための相互理解と人材育成が必要であると思います。

このような背景の中で、市民や地域だけでなく、企業、大学、NPOなどの相互連携が必要であり、民間活力の活用についても非常に重要なところではないでしょうか。

そこで、この総働の取り組みを進めるためにも市の取り組み方針、組織の協力体制とともに、それに携わる職員の理解についてどのようなお考えなのか。また、今後どのように市民の皆様と相互に連携して取り組まれるのかについての答弁を求めます。

3.垣根を超える庁舎内協働の取り組みについて

地域や現場にある複雑化した現在の課題に対して、市民協働や総働の取り組みを進めていくためには、行政内の垣根を超える取り組みが非常に重要と思いますが、行政内部におけるいわゆる庁舎内協働への取り組みについて、今までどのような取り組みをされてきたのか。

それらを踏まえ、行政の手の届かない領域に公共サービスを行き渡らせることを目指した活動を展開されなければならない市民活動推進課として、今後どのように取り組まれるのかの答弁を求め、質問を終わります。

 

 総務部市民活動推進課長(祖父江由美)

NPO等と行政機関の連携による公共サービスの実施について、お答えいたします。

ご質問いただきましたように、市民協働推進事業補助金は市民が行う公益社会貢献事業、言いかえれば市民による公共サービスに補助するものです。

つまり、よりよいまちにするという市民の思いを支援し、市民の活動を公共的な分野まで発展させるために効果が期待される事業に補助をするものです。

行政の手の届かない領域や、行政でなくてもできる領域に視点を置いた公共性、公益性が高く市民視点ならではの知恵の詰まった完成度の高い事業も幾つか生まれました。

その中には、各部署に引き継ぎ、補助や委託事業として実施しているものもあります。

しかし、ご指摘のとおり行政の各部署との連携がうまくいかず、力を出し切れない現状もございます。

これはそもそも公共サービスは行政機関が行うものだという先入観から脱することができない職員がまだまだ多いということも一因になっていると思います。

しかし、今後、地域課題に対応する公共サービスを行政だけが担い、継続し続けることには限界があります。行政事業をスリム化し、市民の皆様のお力に委ねられるものは委ねる、そういう仕組みを皆様とともにつくり上げていかなくてはなりません。

そこで、NPOなどの団体と各関連部署との打ち合わせ、実施への責任分担と支援、情報共有、振り返りなどを通じて市民や事業目的への理解を深め、団体や市民による事業の精度を上げていくことを目指してまいりたいと思います。そして、行政の視点と市民の視点との違いによる相互の誤解が生じないよう、その間に立って円滑で効果的な取り組みが生まれるよう努力してまいります。

 

 総務部市民活動推進課長(祖父江由美)

民間活力の活用に対する職員理解と活用方針について、お答えします。

議員のおっしゃるとおり、イベント、行事から脱却し、課題解決のための事業を発展させるためには総働が必要で、行政と市民の相互理解、人材育成が不可欠です。

職員に向けても、今後ますます複雑化することが予想される課題解決のためには、行政だけの取り組みでは困難なことは明らかで、総働で取り組むことが必要であることを逐次周知してまいります。

また、行政、市民、地域だけでなく事業者、NPOなど、さらに多様な主体が協力していくためには、多くの主体が集まり地域課題について話し合う場づくり、きっかけづくりが必要です。そうした場で、ありたい未来像をイメージし共有しながら進める取り組みが総働の形でもあります。

そうした場づくり、きっかけづくりを目的として、市民協働カフェや交流会などを推進してまいりますので、よろしくお願い申し上げます。

 

 総務部市民活動推進課長(祖父江由美)

垣根を超える庁舎内協働の取り組みについて、お答えいたします。

初めに、今までの庁舎内協働への取り組みについてでございますが、平成23年度から各課に市民協働担当者を設置し、組織間の壁を超えることを意識しながら協働についての情報共有、研修などを実施し、各職員が市役所全体のミッションを常に意識し共有できるよう取り組んでまいりました。

一方で、各部署の垣根の有無にかかわらず地域課題は次々に生まれます。一つ一つの課題に向き合うたびに、もう一度市役所のミッションが何かということに立ち返って、全体を理解することが必要です。市役所が一枚岩になり、職員が誇りを持って業務に取り組めるように庁舎内協働の取り組みを進めていきたいと思います。

万が一、行政内の垣根を感じるようなことがあれば、ぜひ叱咤激励をお願いしたいと存じます。よろしくお願いします。

 

 沢田 哲

ただいまの答弁の中で、非常によく検討されて力強い答弁をしていただいたなあと感謝しております。

この事業を進めていくためには、本当に一体となって協力し合って一つ一つの課題に立ち向かっていかなければならない、それは十分皆さんのほうもご承知だと思っておりますので、より一層、一課に集中して任せていくんじゃなくして全庁を挙げてこの問題を取り組み、市が少しでも本当の意味で行政としてやらなければならない本当の仕事に邁進できるように、ぜひとも皆さんのお力のほうもおかりしたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

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